教室のドアが乱暴に開けられた。ドアの外にはガタイのいい男子生徒が一人。確か他のクラスで見たことがある。
そのジャイアンのような男がこちらに向かってくる。
「ゆーってのはお前?」
「はい...そうですけど」
すこし距離をとって応えると強引に教室の外に連れ出された。
ジャイアンは強めの口調で言う
「お前、白木さんとどういう関係だコラ」
白木?はて?いかんせん人の名前を覚えるのが苦手な方なので白木という苗字に覚えがない。そういえばご近所に引っ越してきた人がそんな名前だったかなあ…
「白木ってだれ?」と答えると胸倉を掴まれた。
「しらばっくれてんじゃねえよ!お前白木さんと付き合ってるんだろうが!白木さん本人が公言してて学校中噂になってるんだよ!」
なんと僕は知らないうちに誰かと付き合っていたらしい。彼女は何もしなくても出来る。
世の中の童貞よ。果報は寝て待て。そして一生そのままで朽ちはてろ。
「そんな噂しらねえよ!だいたい白木って誰だよ!」
胸倉を掴まれたままおとなしくしているのもシャクなので大声で言い返してやった。
すると先生がきた。
「おい!お前ら何やってるんだ!!!!」
そこから一時間分の説教。
もううんざりだ。教室に帰りげっそりした顔で席に戻るとクラスメイトが声をかけてきた。
「どうしたん?そんな疲れた顔して?」
「さっきのジャイアンと先生に説教くらってたわ。それよりお前白木さんって誰かわかる?」
「白木さん?ってあの白木さんだろ?超美人の。」
「お前わかんのかよ。」
「そりゃそうよ。一年生だけじゃなく上級生たちも狙ってるらしいぜ。でどうしたの?気になるの?」
「いや、なんていうかよくわかんないんだけどその白木さんがなんかクラスで僕と付き合ってるってホラ吹いてるらしい」
「なんでそんなウソつくんだよ。お前と付き合ってるって嘘つくメリットはなに?(笑)」
「僕がわかるわかないだろ。女の子に好かれるのはいいけどさっきのジャイアンみたいのに絡まれるのはすごいめんどくさいなあ...」
「でもまあ嘘ついてるにしても近い内にコンタクトがあるんじゃないか?なにか目的があるんだろうし。その目的に関しては見当もつかないけどな」
「ああ...とりあえず様子を見るよ。」
その日は帰りに母親からお使いを頼まれていたためスーパーに寄った。
買い物を済ませ外に出ると雨が降っていた。
「今日降るって言ってなかったじゃん…」
はあ、っとため息をつきもう一度店内に戻って傘を購入しとぼとぼと歩く。
やがて家の前の通りに差し掛かった時ちょうどうちの家の方向を見ながら傘もささず雨に打たれる少女が立っていた。少女の髪が長く日もすっかり落ちてしまったので顔も見えない。少し気味が悪かった。しかしこの人の前を通り、無視して家に入るのもなんだか虫の居所が悪い。
僕は勇気を出して声をかけた。
「あの、傘無いんですか?僕の家そこなんでこれ使ってください。」
そう言って僕は少女に傘をさし出した。少女は傘を受け取ったが使おうとはしない。
自分に出来ることはやった。と自分に言い聞かせ少女に「ではこれで」と告げて少女を背に家に入った。後ろから少女が何か言ったような気がしたが雨の音でほとんど何も聞こえなかったがきっとお礼の言葉でも述べているのだろう。
家に帰った僕は「ただいまー」と一言いいリビングに向かう
「ゆーくんお帰り。雨降ってきて大変だったでしょう。」
「まあスーパーで傘も買ったし濡れはしなかったよ。それよりお母さん。家の近くにいた女の子誰か知ってる?」
「家の近く?いま?」
「そう!いま!さっき家の前で傘もささないで俯いてる女の子がいてさ。もしかしたらまだいるかも。」
部屋の窓をそーっとあけて外を確認する。
「誰もいないじゃない」
「おかしいなーさっきまでいたんだけどなあ」
「あんたそれもしかして...」
「幽霊とか言うんだろ。分かったから早く夕飯の支度してよ。」
「あらあらゆーくんったらこわがりなんだから」
母親とのやり取りであの少女から感じた不気味さもなんだか和らいだ気がした。
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「あの、傘無いんですか?僕の家そこなんでこれ使ってください。」
「ではこれで」
少女は終始うつむいていた。
少年が別れの挨拶を告げた後少女は妖艶な笑みを浮かべてこう言った。
「見ぃつけた...」
つづく?