食料品の消費税1%へ。外食に問われる「わざわざ行く理由」
渋谷区 恵比寿 の 税理士 上田智雄です。
今日は、飲食料品の消費税率が1%に下がる話です。飲食店を営む方々とお話ししながら、考えたことを書いてみます。
■飲食料品は1%、外食は10%のまま
政府は今年9月15日、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる大綱(法案のもとになる、政府の方針の大筋)を閣議決定しました。
まだ法律になったわけではありません。10月に召集される国会に法案が出される見通しで、成立すれば、2027年4月1日から2年間の予定です。2年たったら、今の8%に戻ります。
対象は、いまの軽減税率(8%)の飲食料品と同じ範囲です。スーパーの食材やテイクアウト、出前は1%。一方で、お店の中で食べる外食は10%のまま据え置かれます。
つまり、外食と持ち帰りの税率の差が、いまの2ポイントから9ポイントに開きます。
税抜1,000円の食事なら、店内(10%)で食べると1,100円、持ち帰り(1%)なら1,010円。今は20円の差が、90円の差になる計算です。
■値上げが続く中で
飲食店にとっては、厳しいタイミングでもあります。
食べ物の値上げは、ずっと続いています。8月の消費者物価を見ても、生鮮食品を除く食料は前年より2.7%上がっています。メインの食材だけでなく、スパイスのような細かいものまで値上げが続いています。
家賃や人件費の負担も重くなっている、とよく聞きます。人件費で言えば、東京都の最低賃金も、この10月1日から1,280円に。
全部が上がっている、、、お店の方々のお話を聞いていると、そう感じます。
日本フードサービス協会の会員企業の統計を見ると、8月の客数は前年比102.6%。数字の上では、まだ前年を上回っています。
ただ、お付き合いのある飲食店の方々からは、お客さまが少しずつ減ってきているように感じる、という声を聞きます。そこに今回の税率の差です。外食を控えて家で食べる人が増えるのではないか、と心配される方もいらっしゃいます。
■「なぜ外で食べるのか」が問われる
これは、値段だけの話ではないように思います。
お腹を満たすだけなら、持ち帰りのほうが安い。家で作れば、もっと安い。9ポイントの差は、そのことをはっきり見せてしまいます。
だとすると、お客さまがわざわざお店に足を運ぶ理由は何なのか。外食とは何なのか。ビジネスの定義そのものを、見つめ直す時期に来ているのかもしれません。
■人は、つながりにお金を払う
そういえば、先日話した先輩から、こんな話を聞きました。
ピカソの本物と、精巧なコピー。見た目は同じ絵なのに、片方には桁違いの値段がつく。違いは、その絵の物語と、描いた人とのつながりだ、と。価値を決めているのは人なんですね。
ライブに行く人も、つながりを求めて足を運ぶ。有名な人ゆかりの品が高く売れるのも、誰が使ったかで値段が変わるから。
「People pay for connections.」人は、つながりにお金を払う。先輩は、そう話していました。
たとえば、高級なバーに行く人も、お酒だけが目的ではないのでしょう。お酒だけなら、家で飲んだほうがずっと安い。そこにいる人や、その場の関係性にもお金を払っているのだと思います。
何を出すかに加えて、誰が、なぜやっているのか。人は案外、そこにも惹かれて通っているように感じます。
■飲食店にとっての「つながり」
飲食店に置き換えると、何になるのでしょうか。
料理の味やボリュームは、お店の土台です。もちろん一番大事です。ただ、それだけで比べられると、持ち帰りや家のごはんとの価格差に、どうしても押されてしまいます。
一方で、お店には、お店にしかないものがあります。店主がなぜこの店を始めたのか。この一皿にどんな思いを込めているのか。そこで過ごす時間、顔なじみのスタッフとの会話、一緒に行った人との思い出。。。
そういうものが伝わると、「この人の、このお店とつながっていたい」という気持ちが生まれるのかもしれません。
ただ、先輩はこうも言っていました。これは使えるけれど、大きな罠でもある、と。
演出や物語だけをつくっても、中身が伴わなければ続かないのだと思います。飾るのではなく、もともとあるものを、ちゃんと伝える。これは、私自身にも当てはまる話です。
■9ポイントの差の、その先に
税率の差は、お店の側では変えられません。でも、なぜお店をやっているのか、お客さまが何に価値を感じてくれているのかは、お店ごとに見つめ直すことができます。
税率や数字の整理は、私たちの仕事です。その先にある「このお店の価値」も、お店の方々と一緒に考えていけたらと思っています。
外で食べる理由は、お店の数だけある。