アートと“トラップ”——地方の閉塞を越えていく力 | 渋谷区 恵比寿 の駅前 税理士のブログ

アートと“トラップ”——地方の閉塞を越えていく力

渋谷区 恵比寿 の 税理士 上田智雄です。

 

 


山が連なり、森が茂り、田んぼが広がる――そんな殺風景とも言える田舎に、

突如として鮮やかな黄色い看板が現れます。






経済活動も衰退し、人が住む場所としての未来さえ閉ざされつつある地域には、

本来似つかわしくないほど艶やかな黄色です。






このコントラストが、とても不思議に感じられました。

「これは何だろう」と。





それは、田舎にアートを持ち込もうとする活動の象徴でした。




●人口4万人の街で感じた、“典型的な日本の地方自治体”の姿


今回、地方のお客様を訪問してきました。

人口は約4万人。都心へのアクセスは悪く、冬には豪雪で経済活動も止まります。

若い人は豊かさを求めて都会へ移り、そのまま戻ってこないケースが多いようです。





残るのは保守的な価値観を持つ層が中心で、人口ピラミッドは高齢者が大半を占めます。

インフラ維持のコストは年々重くなり、市の財政は悪化の一途です。



こうした姿は、日本の多くの地方自治体が直面している典型例ではないかと感じました。




●その街に“アート”を持ち込み、年間80万人が訪れる奇跡


そんな街に25年前にアートを持ち込まれ、

いまでは年間80万人が訪れるほどの活動になっているといいます。





この継続が、どれほど大変な挑戦なのか、すぐに想像がつきます。


自ら収益を生み続ける必要がある

◯政治を巻き込み、継続性を確保しなければならない

◯地元住民の理解と協力を得る必要がある


話を聞けば聞くほど、これは簡単な取り組みではありません。


アートを持ち込むという行為は、美しく見えて実は非常にチャレンジングな営みなのです。






●アートが生まれる裏側には、必ず“誰かの犠牲”がある


巨大なアート施設を作れば、街のシンボルになります。

経済効果も期待できます。

しかし、それは裏を返せば、既存のビジネスとの競合が生まれるということでもあります。




地元の人々は活動そのものには共感してくれます。

しかし「自分の仕事が減るのではないか」という不安が生まれた瞬間、

賛成していた人が反対に転じることがあります。


さらに、騒音や渋滞、人の流入に対する不安もあります。

不安が高まると、反対運動が起こり、

政治家を巻き込んで止めようとする動きも出てきます。


こうした現象を、関係者はトラップと呼んでいました。



●“トラップ”とは、人間の根源的な心理です


トラップとは、

「今の安定を失いたくないという、人間に共通する心理」


そしてそこから生まれる「足の引っ張り合いや、出る杭を打とうとする行動」を指しています



長期的には衰退する流れが見えていても、

人は短期的な安心を守ろうとします。


地方では、この心理が特に強く働きます。





その中で街全体を巻き込むアート活動を実現し続けることは、

ある意味“異常”とも言えるほどの挑戦です。





活動する組織自身も、

このトラップによって何度も力を削がれ、

諦めそうになる瞬間があったはずです。



●それでもアートは“生み出す”――これがアートの本質ではないか


それでもなお、アートは立ち止まらず、

反対や不安を超えて、新しい価値を生み出し続けます。


私は思いました。


アートとは、トラップを越えて創造し続ける力そのものではないかと。


アートとトラップ。

どちらが勝つのでしょうか。



●この活動の行方を見届けたい。そして、自分の心の支えにしたい


今回の訪問で、

この街のアート活動が単なる観光イベントではなく、

“人の心理との戦い”であることを知りました。





私は、この長く続く挑戦の行方を見守りたいと思いました。

そして、陰ながら応援していきたいです。


同時に、このアート活動の中にある“戦う心”を、

自分自身の活動の支えにしていきたいと強く思いました。

 

 

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