先の6月議会では賛否の分かれた議案が2件ありました(市長の退職金辞退に関する条例制定と上水道料金の値上げ)。

賛否の分かれた議案について、後日発行される議会だよりで各々の議員の賛否〇×は掲載されますが、その理由までは直接お伝えしない限りわかりませんので、こちらで発信しておきます。

 

【議案第47号上田市長の退職手当の特例に関する条例制定】

こちらは「市長の現在の任期に係る退職手当を支給しない」という条例の制定で、結果は賛成多数(反対8)で可決・成立しましたが、私は「反対」の立場を取らせて頂きました。市長の退職金は現在の基準から計算すると約2,000万円になります。

 

まず、本議案に関する南波議員の一般質問の中で、市長は次のように述べられましたのでご紹介します(一部抜粋)。

 

「上田再構築を掲げ、責任ある上田市のリーダーとしてのまちづくりに邁進していくには、あえて自ら厳しい環境に身を置くことで、市民の目線に近づき、市民の気持ちをくみ取ることができるのではないか、このように考え、私の市長としての政治姿勢を示すため、今議会において、今任期における退職手当を辞退することを申し上げた。(中略)常日頃から、将来を見据えた持続可能な財政運営、健全財政の維持を心がけて市政運営に臨んでおりますので、財政がひっ迫しているから退職手当を辞退するということではない。」

 

この中で私が最も気になったのは「常日頃から、将来を見据えた持続可能な財政運営、健全財政の維持を心がけて市政運営に臨んでおりますので、財政がひっ迫しているから退職手当を辞退するということではない。」という市長のご認識と上田市の現実とのギャップでした。

上田市は人口減少が始まって既に20年が経過しています。少子高齢化で生産年齢人口が減少することに伴い、税収は減少し、一方で社会保障費は増加していきます。また、市内にある400近くの公共施設やインフラの更新・改修に係るコストは今後40年間に渡り、年間100億円程度かかり、このままでは市民一人当たりの負担は年々増加していくこともわかっています。それに加え、近年では令和元年東日本台風(19号)等の自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大など、今までは予測が難しかった事態が次々に起こり、その対応には大きな財政出動が伴います。

例えば東京都武蔵野市は、向こう25年間の財政シミュレーションを総合計画に掲載しています。武蔵野市の財務状況は全国的にもかなりよい状況ではありますが、そんな武蔵野市でさえもこのまま行けば約20年後には基金が枯渇し、それ以降財源不足が累積していくと予測しており、そうならないように持続可能な財政運営を標榜しています。一方で、残念ながら上田市は「経済情勢や国、県の制度の動向等の環境変化が生じる可能性があることなどから」中期的な将来予測を示していません。

また、財政健全化というと単純に「経費削減」をイメージされる方が多いのですが、公民連携(PPP)と言って、民間の知恵と工夫を借りるなどして、公共施設・サービスの質の向上を図ると同時にコストも適正化されたり、歳入増加につなげる方法もあります。

上田市の今年度の予算規模(一般会計、特別会計、企業会計)は6月補正時点で1,245億円。今やるべきことは、個人として一時的な退職金を辞退することではなく、市長として上田再構築(見直すべきものは徹底的に見直し、伸ばすものは伸ばす)の理念のもと、1,245億円の事業の中で再構築(改善)をはかり、真に求められている施策に資源を重点配分していくことだと思います。

と言うわけで、退職金を辞退することは本質的な解決に繋がらないので、私は反対しました。

 

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

写真は、小学校の授業の一環で娘が持ち帰ってきたお蚕さまと一番最初に繭になったものです。

私が小学校の頃はここまでしなかったので、とても勉強になります!