[雑感]
 

今作は、感情がめまぐるしく変化する作品でした。

特に、『演者が涙を流し、観客に涙を流させた、その直後に笑わせる』、

というパターンが印象的でした。

 

 

役者さんの涙。

 

井路端さんの場面を始め、

今作は、泣きと笑いが目まぐるしく交差する場面が多く、

そんな中でも、しっかり涙を流していてました。

役者さんの気持ちのコントロールは素晴らしいものがありますね。

 

 

秘密について。

観客、登場人物に、どのタイミングで秘密を打ちあけるのか、
様々なパターンがありました。

秘密を知らせるタイミングを変えることで、
笑い・怒り・涙…観客に様々な感情を抱かせる作りになっていたと思います。


主には、『茂造の中身が伊藤和也』であることを

和也(茂造)と観客が共有し、他の登場人物が知らないことで、
和也のもどかしい思いを共有する、というものでした。


最後に効いたのは、『夫婦の思い出』という、

和也夫婦と観客だけが知っている秘密でした。

 

 

脳科学のスペシャリスト・佐村河内について。

 

個人的には、おそ松くんの『イヤミ』をイメージする外見でした。

 

今作限定とせず、新喜劇の本公演でも広げていってもらいたいです。

『スパッツおっさん』に匹敵するキャラクターになるのではないでしょうか。

 

 

キャラメルパッキングさんの曲『ひみつ』。

 

公演中の2週間しか曲を聴くことができないのは、非常に勿体なく感じます。

曲を聴くことで、作品を振り返ったり、思い出すこともあると思います。

音源化してくださると嬉しいですね。

 

 


和也の『覚悟』について。

『魂は永遠の孤独に苛まれ、ただ彷徨い、苦しみ続ける』
…右も左も無い真っ暗な世界に自分一人だけが居続けるイメージでしょうか。

和也は、このことに対して、本当の意味での覚悟はあったのでしょうか。



「愛する人や仲間を守りたい」
今作は、一貫して、家族や仲間を思う気持ちが和也を突き動かしていて、
正体を明かした場合の代償の過酷さと向き合い、恐怖するような描写はありません。

 

自己犠牲の美しさには大きな光が当たっていますが、

個としての和也には(描写という点では)重きが置かれていません。

 

和也の口調では、正体を明かせない理由は、
陽子と結衣を守れなくなるから・傍に居られなくなるから、
という以上のものではありませんでした。
 
最後に正体を明かしますが、
咄嗟に庇って、ナイフで刺される、車に跳ねられる…
といった行動と同じように見えました。



以上のように、和也には、自分を犠牲にする覚悟はあったように思いますが、
その後の孤独に耐える覚悟はどれほどのものだったでしょうか?

果たして、家族や仲間との過去の幸せの思い出だけで、

家族や仲間の未来の幸せを想う気持ちだけで、
今から百年して家族や仲間が皆この世を去り、一人また過去を想う気持ちだけで、
和也の魂は『永遠の孤独』に耐えられるでしょうか?

覚悟というものは、
自分の想定を超えるものに見舞われた場合、
脆く崩れてしまうのが人間のように思います。
 
そして、個というものは、
全体のために割り切れるほど小さなものではないように思います。


作中、永遠の孤独の世界から抜け出す道は一切示されません。

ただ、天使は、以下のような発言をしていました。
「この世には、思いもよらないことがあるのよ」
「この世には、信じられない世界があるのよ」

抜け出せないはずの『無間地獄』にも、
思いもよらないこと・信じられないことがあってほしいですね。

 

 

演出について。
 
公演中も演出が変更されていきました。
 
例えば、終盤では-
和也が金平の拳銃を掴む場面では、
最初の頃は、リンダが頭上で指を鳴らし、時を止めていました。
しかし、その演出は無くなりました。
 
和也が金平に銃を向ける場面では、
最初の頃は、和也が「バーンッ!」と声を上げますが、
途中の公演からは、天井に拳銃を発射するようになりました。
 
金平が連行される場面では、
最初の頃は、金平が脇に居る和也を見て恐れる形でしたが、
途中の公演からは、和也が立ち塞がるようになりました。
 
緑の借金取りの「ブラジャーを着けてたのに、俺、死んだー!」は
「俺、死んだー!」と、コンパクトな台詞になりました。
 
より意図が伝わり易いように、より良い作品になるように、
公演後、日々、演出を練り直されていたのでしょうね。
 
 
辻本茂雄さんの作風について。

昨年も触れましたが、辻本茂雄さんという方は、
①血の通った人物描写
②クライマックスを最大限に効かせるための物語の積み上げ
③観客の感情のコントロール
に非常に長けているように感じます。

 

 

茂造夜芝居は、観ていて心地よく、
観終わった後は、心が清められたように感じますね。

演出・演技がともに自然なため、
登場人物に感情移入し易く、どんどん愛着が湧き、
二週間の公演終わりには、登場人物との別れを惜しんでいるように思います。

来年の茂造夜芝居を楽しみに、一年を過ごしていきたいと思います。

 
 
千穐楽公演(2018/05/07)の内容について、記述いたしました。

 

2018/04~05 【ひみつの茂造】 追記・千穐楽公演

 

 

 

18/04/24~05/07
【ひみつの茂造】 完