今年見た映画32本めは

「塀の中のジュリアス・シーザー」

イタリアにあるレビッビア刑務所で毎年行われる演劇実習。今年の演目はシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」に決まり、選ばれた囚人たちが刑務所内で稽古をはじめます。
そんな、彼らの舞台の模様と稽古風景を追ったドキュメンタリーです。

監督は、「父/パードレ・パドローネ」「サン・ロレンツォの夜」のパオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟。

囚人たちが舞台に向けて稽古するところは確かにドキュメンタリーなのですが、稽古というよりも、刑務所の至る所をセットにして「ジュリアス・シーザー」を演じているような演出になっています。
う~ん、あまりに斬新すぎて上手く説明できないな。

囚人たちは、みんな演技が上手すぎて、本物の俳優かと思っちゃいました。
オーディションからみんな迫真の演技で、思わず見入っちゃいます。

セリフの稽古をしている途中で急に素に戻りケンカが始まったりとか、どこまでが演技なのかわからなくなる。表情も豊かで、ひょっとして囚人ってのも役なのかなって疑うくらい。

囚人たちの過去や性格が役とオーバーラップ。Tシャツとか着ているのにまったく違和感なくなっていきます。

これまでにも、数々の傑作を作り続けてきたタヴィアーニ兄弟。
囚人たちの劇という題材を「ジュリアス・シーザー」と合わせて、ここまで重厚な人間ドラマにしてしまうなんて、やっぱりすごいな。
しかも、おふたりとも80代というから、さらに驚きです。

76分という短さで、この重厚さ。さすがです。