254 | 貴方のこゝろにバンドエイドを。(失恋・難病)

貴方のこゝろにバンドエイドを。(失恋・難病)

~14歳の恋愛不能、難病ねこが寂しさと痛みを
ねこセンセーと手放していった宣戦布告手紙集~

 

夏休みに海外から届く絵葉書

のように楽しみだった誕生日

 

ある年齢を超えると

避けられない血の重みとにおいを

感じる宿命の雨に変わっていく

 

朝になるといやでも

この部屋に光が届く

 

樹海のような儚さは

どこからやってくるのか

 

死んだ時間の破片を追いかける

ことにこれからも苦悶するだろう

 

 

眠れなかった焦りをひきずって

ベランダに出ると珍しく

螺旋の風が吹いている

 

手すりに肘をついて

タバコをくわえると

冷たい空気が頬を叩く

 

薄明かりに照らされた

都会の空が星々のまどろみ

を溶かしはじめている

 

街の景色は哀しみだけが

反射しているようにみえる

 

遠くで灰青色におぼめく254号線を

ヘッドライトをつけ忘れた車が

夜をかわして朝に向かう

 

わずかに揺れているケヤキ並木

の葉は色づいて静かに影を

畳んで休んでおり

 

鈴虫の声をききながら夜中に

出来上がったばかりの

 

仕事を思い出していると

君の甘い声がきこえてきた

 

あと数分もすれば寝ぼけ

ながら甘えてきて背中に

抱きついてくる

 

寂しさは1人だと大きく

なりたがるけれど2人の

前では逃げたがる

 

 

今日くらい仕事をすべて忘れて

 

ほのかに苦い香りの

コーヒーと少し高い

ショートケーキで

 

ささやかな世界の一コマを

君に祝ってもらうんだ