日本の伝統文化と成長マインドセット | 我が学習の変遷の記録(旧・宇宙わくわく共創局)

日本の伝統文化と成長マインドセット

 

 

 
最近私のキーワードは、「固定マインドセット」と「しなやかマインドセット」の2つです。
 
この2つのマインドセットは、キャロル•デュエックさんの著作「マインドセット」から学んだものですが、これらは私たちの人生を生きる上で大きな違いをもたらす2つのマインドセットなのです。
 
ご存知のない方のためにを紹介しておきますと、固定マインドセットと言うのは、自分の能力を固定的に捉え、自分が生まれつき優れているとか、自分は生まれつきダメであるとか決めつけて、努力を怠ったり、努力をしないところに主な特徴があります。つまり、目の前の結果に重点を置くのです。
 
一方で、しなやかマインドセット(成長マインドセット)は、自分の能力を固定的に捉えず、努力をすることによって成長することができると言うマインドセットです。たとえ、目の前の結果が思わしいものでなくても、そこに重点を置くのではなく、自分は「まだできない、自分は発展途上にあるのだ」と捉えるのです。つまり、結果ではなくプロセス重視のマインドセットなのです。
 
固定マインドセットの人が自分が「できない」理由を外側に求めて、自分の努力を怠ったり、自分の失敗を受け入れたりしないのに対して、成長マインドセットの人は、自分が「できない」理由を外側に求めるのではなく、自分に求め、自分の責任でどのように限られた条件のもとであっても成長していくことができるかを発見し行動しようとします。
 
言い方を変えると、固定マインドセットはすぐ人や環境のせいにする「無責任マインドセット」であり、成長マインドセットは自分の責任で成功も失敗も受け入れ、さらに前に進むをする「責任マインドセット」であると言えるかもしれません。
 
また、固定マインドセットは、自分の優位性を証明する事に膨大なエネルギーを使い、能力の固定性を増大させていきます。一方で、成長マインドセットは自分の優位性を他の人に証明することよりも、自分の好きなことにどんどん落ち込んでいくこと、少しでも成長していくことにエネルギーを割くのです。
 
そこで気がついたのは、Facebookなどのソーシャルメディアの多くは、自分の優位性を他者に証明する人間を大量に生み出していると言うことです。私もこれを書いていて耳が痛いのですが、自分の子供が何か素晴らしい成果を示したとか、自分がビジネスで成功したとか、自分の本を出版したとか、家族と旅行に行ったとか、何かおいしいもの食べたとか、どれを見ても結果ばかりです。そんなことをしなくても、自分や自分の家族の成功を実感することができるのに、それをわざわざまるで他者に証明するかのように、大量にソーシャルメディアに投稿するのは、自分自身の固定マインドセットを増大させるだけでなく、それを見る他者も固定マインドセットに心が固定されていく傾向を生み出すのではないでしょうか。
 
もちろん、ソーシャルメディアに対する投稿自体が悪いと言ってるのではなく、その中身についてちょっと一歩立ち止まって捉えてみる必要があるんではないかと言うことを言っているのです。自分の投稿が、自分の優位性を示すことをだけのために行われようとしているのかどうなのか一度検討してみる必要があるんだと思うんです。
 
そして、つくづく思うのは、日本の伝統文化と、しなやかマインドセットのつながりです。ご存知のように、日本の伝統文化はその根底に禅の文化があると言われています。禅の世界では、物事を固定的に捉えずに、しなやかに捉えることを前提としています。
 
特に、「禅マインド、ビギナーズマインド」の中でも書かれているように、私たちはどんなに長い経験があったとしても、初心者の心を忘れないことの重要性が説かれています。すなわち、長い経験を積むとそれによって物事を固定的に捉える傾向が出てきますが、初心者はすべてのことに対する執着や固定的な考え方がなく、すべてのことに好奇心を抱いて心を開いて臨んでいくわけです。ここに私は成長マインドセットと日本の禅文化の共通点を感じるわけです。
 
もし、固定マインドセットを持った人が、茶道などをしたら、「そんなの退屈なだけだ」とか、「お茶が苦いからやだ」などの決めつけをして、そのプロセスを楽しむと言うことができないんではないかと思います。また、自分は茶道をやっているんだと言うことを他の人に証明するために、その様子をどんどん写真に撮ってソーシャルメディアにアップロードしたりするのではないでしょうか。
 
また、日本の格闘技などを固定マインドセットを持った人がやったら、自分は今白帯だからダメだとか、黒帯の人だから素晴らしいと言うような固定した捉え方をするかもしれませんし、そもそも格闘技は人と戦うからダメだとか、痛いからやりたくないと言う決めつけも行われるかもしれません。
 
このように、ちょっと例を見たとしても、日本の伝統文化は、固定マインドセットを持った人には、非常に敷居の高いものであり、なかなか入ってきにくいものだと思います。しかし、しなやかマインドセットを持った人は決めつけをしないで、まずは自分の責任で取り組んでみる、その上でその体験のプロセスを楽しむと言う姿勢ができるんだと思います。
 
キャロル•デュエックさんの「マインドセット」は本当にオススメの本です。これを学ぶことによって、自分が今どちらのマインドセットなのかがわかると思います。そして他者も、今どちらのマインドセットで言動しているのかが分かるんだと思います。
 
最後に指摘したいのは、「あの人は固定マインドセットだ」とか、「あの人は成長マインドセットだ)とか、マインドセットを固定して捉えることも非現実的だということです。キャロルさんがおっしゃるように、マインドセットは選ぶことができるのです。そういうしなやかさを持って、自分のマインドセットを見つめ直してみたいものです。
 

 

 

 
オーストラリアより愛と感謝を込めて。
野中恒宏