仕掛ければ仕掛けるほど問題が解決する! | 我が学習の変遷の記録(旧・宇宙わくわく共創局)

仕掛ければ仕掛けるほど問題が解決する!


人生には様々な仕掛けが施されています。例えば、毎朝私がやってくる公園では、子供たちや大人が思わず体を動かしたくなるように様々な仕掛けが施されていることに気がつきます。

例えば、子供たちが思わず乗ってしまいたくなるような馬の形をしたシーソー、そして思わずよじ登ってしまいたい気持ちを起こすクモの巣のようなジャングルジム、などです。

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この公園は、ブリスベン市政府が管理している公園で、明らかにその仕掛けの裏には意図があります。つまり、子供や大人の健康を増進させようとする意図です。

ここで重要なのは、確かに健康増進させることは重要ですが、私たちは日常生活の習慣にどっぷりつかってしまいがちな生き物なので、いくら政府が声高にポスターやコマーシャルなどを通じて「健康を増進しましょう」と叫んでも、なかなか人々は自分の日々の習慣の行動を変えようとしないわけです。

そこで、政府は知恵を巡らせて、人々が思わずやりたくなってしまうような仕掛けを公園に作り出したと言うわけです。

もちろん人々の中には、忙しくても、甘いもの食べていても、体を動かしたい、痩せたい、健康になりたいと言う思いは心のどこかにあるわけで、それを形にするきっかけがなかなかないというのが現状なのかもしれません。もちろん意識の高い人たちは、お金を払ってフィットネスに行ったりしますが、多くの人たちは、なかなかそうした時間やお金を健康に投資することをしようとしないようです。しかし、身近な公園に無料で出来るようなフィットネスの設備があると、思わずそれを使いたくなってみたいと言う心理が働くようで、この公園のフィットネスの設備は、毎日多くの人たちに利用されています。

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このように、人の習慣的な行動を無理矢理変える事はできないわけですが、人々の心の中にある興味関心を仕掛けによって新たな行動に結びつけるという取り組みは、最近至る所で行われているようです。

例えば、ビジネスや商売の領域では、お客さんが思わず買いたくなる行動を起こすような、様々な仕組みが施されています。「本日限定」とか、「1個買えばもう一個はただ」などはその例かもしれません。

しかし、最近注目されているのは、商売の領域ではなく、公共の領域で、個人の興味関心を公益に結びつけるような様々な仕組みです。

例えば、ゴミ箱の上にバスケットボールのネットを設置して、人々が思わずゴミをそのネットに向かって投げ入れ、その結果多くのごみを収集できるようになったという仕組みです。また、同じゴミの例ですが、ゴミ箱にゴミを入れると、その瞬間に長い落下音が聞こえてきて、まるで深い深い井戸にゴミが落下していくような感覚を楽しめると言う仕組みです。一見馬鹿げてるように聞こえるかもしれませんが、この音を聞くために多くの人々がゴミをそのゴミ箱に入れるようになったようです。これらは大人のちょっとした遊び心をゴミ捨てと言う行動に結びつけた仕掛けです。

また後片付けが苦手な子供に何とか後片付けをしてもらうために、「お腹を空かせた牛」と言う大きな袋上のぬいぐるみもあるようです。つまり、親が、子供に対して、「この牛さんがお腹が空いてるみたいだよ。いっぱいおもちゃを食べたいんだって」と言うと、子供たちは面白がって、この牛にどんどんどんどんおもちゃを食べさせると言う仕組みです。これは子供たちの動物に餌をやりたいと言う気持ちを、後片付けと言う行動に結びつけた仕掛けです。

また、男子トイレの中央にダーツの的のような絵をかくと、多くの利用者は、その的をめがけて様をたすようになったようです。その結果、トイレの周辺が以前よりも綺麗になったそうです。これも、大人の遊び心をトイレを清潔に使うという目的に結びつけた仕組みです。

このように誰も損をしない「公益性」をもち、人々を惹きつける「誘引性」をもち、仕掛ける目的と行動する目的が異なる「二重性」の特徴持った仕掛けが、社会的に注目され始めているわけです。

私はこのことを学んだ時、これは教育にもっともっと応用したいと思いました。つまり、教育の場合も、子供たちに無理矢理何かを教える事はできませんが、子供たちが自然と何かを学びたいと言う仕掛けを作り出すことによって、学習の効果を増大させる事は可能だと思うからです。子供たちはとても敏感な存在なので、大人がわざとらしく子供たちの学習動機を増やそうとすると、それを見抜いて、シラけたりする子供もいます。したがって、相手にいかに気づかれずに、自然にある行動を促す仕掛けができるかが教育に求められているわけです。

今、私の勤務する学校に、日本から17名の子供たちがやってきています。これは、子供たちに日本語能力能力の増進するきっかけを与えたり、異文化理解のきっかけを与えたりするという目的がありますが、子供たちの中には、新しい人たちと交流したいと言う強い欲求がありますので、この学校訪問プロジェクトは、その両者を結びつける仕掛けであるとも言えるわけです。

子供たちの中にはもともと他者といっぱいコミニケーションしたい、遊びたいと言う感覚が強くあるわけです。その感覚を最大限に増大させるために、様々な仕掛けを施していきたいと思います。

そして、その近くの中で、子供たちが、どんなにポジティブだと思える体験をしても、どんなにネガティブだと思える体験をしても、最終的に行き着くところは愛であるので、様々な「愛の仕組み」を提供してきたいと思っています。人生の中における、最大の仕掛けは愛に気づかせる仕掛けだと思っています。

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今日も読んでいただいて、ありがとうございました。

オーストラリアより、愛と感謝を込めて。
野中恒宏


【参考文献】

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