「量子論」20号

 

 

「トンネル効果」

 

 

 

 トンネル効果とは、量子力学の分野で、エネルギー的に通常は超えることのできない領域を量子が、一定の確率で通り抜けてしまう現象のことです。

 

 このトンネル効果は、量子の「2重性」の効果から説明できます。

 

 すなわち、古典的力学解釈では、物質の運動はポテンシャル障壁と呼ばれる壁に入射すると、衝突して完全に遮られます。

 

  しかし、原子レベルでは、原子や電子の持つエネルギーは、「波動エネルギー」であるため、ポテンシャル障壁よりもエネルギーが小さい場合でも、結果として障壁を「透過」してしまうことがあるのです。 このような性質が「トンネル効果」です。

 

 

量子の「2重性」が生命を維持しています!

 

 

 例えば、呼吸の場合です。

呼吸は酵素と酵素の間を「電子のリレー」によって行われています。しかし、酵素と酵素の間は、小さな電子にとっては、とてつもないほどの遠い距離です。

 

 ここで電子は「粒」ではなく、「波」として運動しているために、難なく到着できる訳です。つまり、量子の2重制が生命を維持している訳です。

 

 

太陽の「核融合」もトンネル効果です!

 

 

「トンネル効果」は、太陽の「核融合」でも行われており、「走査型トンネル顕微鏡」や身近な「USBメモリー」にも使用されています。

 

 

江崎玲於奈が発見した!

 

 

 トンネル効果は、物理学者の江崎玲於奈によって発見されたものです。 この発見によって江崎氏は1973年にノーベル物理学賞を授与されています。

 

 トンネル効果を応用した製品としては「トンネルダイオード」があります。

 

 トンネルダイオードは、ある電圧領域において電圧をかければかけるほど電流が流れにくくなる特性(負性抵抗)を利用して、マイクロ波のような超高周波領域で発振・増幅を行うためのダイオードで活用されています。