「量子論」19号
「量子もつれ」(2)
ベルの「不等式」は成立しなかった!
繰り返しますが、上記のような「もつれ」合った「2個の光子」を、1メートル離して、片方を観測してみると、「右巻き」と判明した。すると、もう片方は必ず「左巻き」となります。
それをさらにお互いの距離を遠くして、1光年先まで離した場合は、どうなるのでしょうか。
ここにおいて量子力学の立場は、地上の光子を観測し、「右巻き」だと分かった瞬間に、もう一方の光子は、かならず「左巻き」に決まるというのです。
そして、その伝わる速度が光速を越えて「超光速」だという訳です。
1光年先の場所でも、もつれ合った量子の場合のみは、1光年は必要としないというのです。もつれ合った量子の場合のみは、瞬間で伝わると言う訳です。
時は流れ、「EPR論文」から29年後の1964年のことです。イギリスの物理学者・ベルは、1本の短い論文を発表した。
その論文とは、ベルの「不等式」と言われるもので、もしベルの不等式が「成立」すれば、アインシュタインの主張が正しく、量子力学が間違っている。
反対にベルの不等式が「成立しない」ならば、量子力学が正しく、アインシュタインの主張が間違っている、というものです。
量子もつれ(エンタングルメント)が、立証された!
その検証実験が、フランスの物理学者・アラン・アスペによって、1975年から1982年にかけて約7年間に渡り行われた。
その結果は、ベルの不等式は成立していなかった、と言うのです。つまり、量子力学が正しく、アインシュタインの主張が間違っている、という結論に至った訳です。すなわち、エンタングルメントは「実在する」と言う結論です。
さらに、高度な実験機器を使って「ベルの不等式」を検証する実験が、それ以来世界中で行わられ、その結果、「もつれ合った量子」に関しては、本当に「一瞬で伝わる」ことが立証されたということです。
この実験結果を、どのように解釈したらいいのでしょうか。もつれ合った量子に関しては、本当に「一瞬で伝わる」ことが立証されたというが、ではその「理由」をどのように考えたらいいのだろうか。
すなわち、「光速度不変の原理」に反せず、しかも「角運動量の保存則」にも反しない理由を、どのように考えるかです。
「角運動量の保存則」は「宇宙全体」に広がっている!
1つの解決策とは、角運動量保存則の「非局所性」という考え方です。
すなわち、A量子の観測により、A量子が「右巻き」と判明した時に、別場所にあるB量子が「左巻き」に決まるのは、「角運動量の保存則」が「宇宙全体」に浸透しているからであり、「情報が超光速で伝わる」からではないということです。
加えて、「量子もつれ」にあるA量子の「右巻き」観測行為の中に、B量子の「左巻き」決定も、同時に含まれているからです。(「量子もつれ」における観測行為の「2重性」です)
繰り返しますが、「量子もつれ」にある場合は、A量子の右巻き「観測行為」の中に、距離が離れたB量子の「左巻き」も同時決定する行為も同時に含まれていることです。
それを可能とするのは、「量子もつれ」の場合は、「角運動量の保存則」が、即時に適用されるからです。
即時に適用される理由は、「角運動量の保存則」が、宇宙全体に「浸透している」からです。
つまり、情報が超光速で伝わるからではない、ということです。これを「角運動量の保存則」の「非局所性」と言います。
「ホログラフィー原理」とは
「非局所性」とは、「宇宙全体に広がっている」という意味です。
このように観測行為の「2重性」と「角運動量の保存則」の「非局所性」(宇宙全体性)を認めれば、「量子もつれ」の「不思議さ」が解消できると思います。
すなわち、「光速度不変の原理」を破ることもなく、また「角運動量の保存則」も保持されることになる訳です。
これも「1=全」という「ホログラフィー原理」の表れと言えます。
つまり、1部分(局在性)は、即宇宙全体(非局在性)であるという原理です。
「角運動量の保存則」が、「地球の場」のみに通用される保存則ではなく、「宇宙全体の保存則」である以上は、それは「当然のこと」だと言えます。
原則があれば、「例外」もある!
しかし、別の解釈も可能です。
すなわち、「量子もつれ」の場合のみに関しては、「超光速」もありうるとする解釈です。
右巻きという「情報」の確定が「量子もつれ」の場合のみは、例外的に「一瞬で」伝わるという解釈です。
すべては「相反する2つ」が「同時に存在」しているからです。(陰陽・同時存在の原理です)。
「光速」があれば、「超光速」もあるということです。
「原則」があれば、「例外もある」ということです。
多細胞生物には「寿命」があり、いずれ老化を迎え、死んでいきます。
しかし、ベニクラゲの場合は、老化を迎えると、若返りのスイッチが入り、幼いポリプに逆戻りして、死なずに生を循環していく、ことが分かっています。
21世紀の現在でも、いまだ解明されていない現象です。
多細胞生物にはありえない現象ですが、このように、この世の現象には「例外」というものがあるのです。