「量子論」18号
「量子もつれ」(1)
宇宙の「本質」とは何か。
宇宙の「根幹」にあるものとは、一体何か。
それは今までたびたび述べてきたように「対称性の原理」というものです。すなわち、「相反する2要素」が「同時存在」していることです。
この「相反する2要素」の「同時存在」の原理から、「量子もつれ」について、考察してみたいと思います。
「量子もつれ」の問題とは、量子もつれにある2個の量子の間においては、情報が「光速を越えて」一瞬で伝わるという解釈問題です。
アインシュタインが、量子力学に対し、最大の疑問を投げかけたものが、この「量子もつれ」(エンタングルメント )という現象です。
その理由は、アインシュタインの「光速不変の原理」に従えば、宇宙において光速を越えるものは絶対に存在しないはずだからです。
アインシュタインはこの「光速不変の原理」を根幹にすえて、特殊相対性理論を発見し構築した訳です。
ですから、光速を越えて一瞬で伝わる「量子もつれ」という現象は、アインシュタインの「光速不変の原理」から、認めるわけにはいかない。到底受け入れられるものではないという訳です。
そこでアインシュタインは、「量子もつれ」という現象に対しては、真正面から異を主張しています。おかしいという訳です。
「量子もつれ」(エンタングルメント )という現象は「不気味な遠隔作用」である!
アインシュタインは、この「量子もつれ」(エンタングルメント )という現象を、「不気味な遠隔作用」と言って、論文で正式に「批判」しています。
その批判とは、量子力学は、いまだ「不完全」であり、未だ発見されていない「隠れた変数」が存在するはずであり、それが発見されたときに、量子力学はより「完全」へ近づく、という主張です。
その論文を「EPR論文」と呼び、ほかの2人と共同で書いたものです。1935年のことです。アインシュタインのE、ポドルスキーのP、ローゼンのR、の頭文字をとって、「EPR論文」と言われています。
「量子もつれ」にすると、光速を「超える」のか?
それでは「量子もつれ」問題とは、具体的には、一体どういうものでしょうか。
ここにπ中間子があります。このπ中間子が、ある時点で「崩壊」を起こします。このときに2個の「光子」が発生します。
これら2個の「光子」の関係には、深い関係があり、その深い関係性を「量子もつれ」と呼びます。
その時に、1つの光子は、右の方向へ飛び、もう1つは左の方向へ飛んでいきます。必ずそうなります。つまり、相反する2つの方向へ飛んでいくのです。同じ方向へ飛んでいくことはありません。
その理由は、「電荷の保存則」と、「角運動量(スピン)の保存則」があるからです。
ベクトル量の場合、右向きと左向きで電荷とスピンが相殺され、総量では、必ず「0」となります。これを「電荷の保存則」と、「角運動量(スピン)の保存則」と言います。
このような電荷0、スピン0の場合、スピンの向きは、右巻きと左巻きの両方が、「重なり合って」2つの光子に存在している状態です。
つまり、右の方向へ飛んだほうが、右巻きとはならず、左の方向へ飛んでいった光子が、左巻きともならないということです。
観測するまでは、かならず両方が重なり合っている状態となっています。
この「重なり合い」と言う現象が、ミクロ世界の量子の最も不思議なところです。
この量子の不思議さは、量子が波であるという「波動性」から出てきます。波の場合は、粒子とは違い、同時に「重なり合うこと」が可能となるからです。
つまり、波の場合は、「あらゆる状態が重なりあって」います。だからこそ「干渉」現象を起こす訳です。
光でレーザーが作れるのは、光が波動だからです。光を幾重にも「重ねて」作ったものがレーザーです。
さて本題は、ここからです。
上記のような「もつれ」合った「2個の光子」を、1メートル離して、片方を観測してみると、「右巻き」と判明した。すると、もう片方は必ず「左巻き」となります。
それをさらにお互いの距離を遠くして、1光年先まで離した場合は、どうなるのでしょうか。
ここにおいて量子力学の立場は、地上の光子を観測し、「右巻き」だと分かった瞬間に、もう一方の光子は、かならず「左巻き」に決まるというのです。
そして、その伝わる速度が光速を越えて「超光速」だという訳です。
1光年先の場所でも、もつれ合った量子の場合のみは、1光年は必要としないというのです。もつれ合った量子の場合のみは、瞬間で伝わると言う訳です。
次回へ。