前回のつづきです。



ーまた遅刻だ。


力の入らない足で自転車を漕ぎながら、内心は学校に遅れることよりも、今日も薬が効かなかったことに焦りを感じていた。



「あんなに飲んだのにな…」



もうずっと、朝のホームルームに行けていない。


その理由が薬、毎日寝る前に飲んでいる下剤であることは自分でも分かっていた。


以前のように効かなくなって、飲む量を増やしてから、体調がどんどん悪くなっている。


それなのに、毎晩「明日こそは効くはず」と、一縷の望みを託すように、一粒多く飲んでしまう。

そして朝になると、ひどい腹痛と倦怠感で動けず、なんとか学校に辿り着いても、保健室で休むのが日課になっていた。



踏切が開くのを待っている間、昨日と同じ景色、昨日と同じことを思っている自分に気づいて、まるで自分だけが、毎日昨日の繰り返しの世界にいるみたいだった。


でもすぐに、それは違うと気づく。


だって、昨日より明らかにお腹が痛い。



ーあぁ、ダメだ、本気で気持ち悪くなってきた。


たまらず自転車を停め、フラフラと道の端によろめきながら、大量の唾液を吐いた。

目の前の景色がかすんで、頭を上げることができない。


朦朧としながらも、無意識に周りに人の足元がないかを確認していた。

誰かに助けてもらうよりも、誰にも見られていない方が重要だったのだ。

誰もいないことに安心して立ち上がったが、そんな状態で自転車を漕げるはずもなく、ハンドルにつかまりながら歩く。


ー私、いったい何してるんだろう。


惨めな気持ちに押しつぶされないように、必死に自転車を押しながら学校へ向かった。



つづく