結局、父は腹を括ったのか、自宅まで送ってくれることになった。
途中までは慣れた道のりだったので、安心して乗っていられたのだが、
自宅が近づくにつれ、運転に明らかに余裕がなくなってきた。
ブレーキが急だったり、前の車がウインカーを出していたのに
「急にウインカー出してきた!!」
と怒ったり。
免許返納を考える子ども世代の気持ちを、こういうときに本当に痛感する。
とはいえ、父も後期高齢者に足を突っ込みつつある年齢。ここは多めに見ることにした。
自宅に行くには、「左折のあとすぐ右折」が必要になるのだが、そのためのルートは2パターンある。
*1パターン目
<ロードサイドの飲食店の看板がデカデカと立っている交差点を左折するルート>
起点が遠目からでもわかりやすく、万が一ミスしてもリカバリーしやすい。
ただし、そのあとすぐに右折する交差点がやや歪な形をしている。
*2パターン目
<ディーラーのある交差点から入るルート>
右折先の道が丁字路になっていて分かりやすいが、左折する地点が見通しが悪く、
地元民でもうっかり見落とすとリカバリーが難しいという難点がある。
「すべての道はローマに通ず」ということで、今回は分かりやすさと安全性を重視し、
最初の飲食店の看板ルート(1パターン目)で行ってもらうことにした。
ところが、前編で父が言っていた
「ナビをしてもらうと道を覚えない」
という発言をすっかり忘れてしまったのか、私にナビを求めてくる。
まぁ、ここまでは予想通り。
「ここ左折か?」「次か? まだか?」と、
運転しながら執拗に聞いてくるのも想定の範囲内だった。
そして、左折のタイミングが近づいてきた。
「次、〇〇(飲食店の名前)の看板が見えたら左折して、すぐ次の信号で右に曲がってね。」
少し歪な形をした交差点の右折も、なんとか難なくこなし、自宅に到着。
一件落着——かと思いきや…。
さて、自宅に着いた両親は、ひと通り家の中を見てまわった。
私なりにこだわったポイントなどを話しながら、なんとなくルームツアーらしきものを実施したが、
父は良くも悪くも一言もなし。母はお決まりの「ふーん」だけ。
義実家の両親や友人たちが来てくれたときは、感嘆の声や細かい質問が飛び交ったのに比べると、あまりにも淡々とした反応。
とはいえ、これも我が家では通常運転だ。
学生時代にテストでいい点を取っても、受験に合格しても、たいして驚かない。
私にとっては、もはやおなじみの「親の無反応」である。
そんなルームツアーのあと、ソファに腰を下ろした父が開口一番。
「実家に帰るのに、もっとシンプルな道はないのか?」
……いや、これ以上シンプルな道、ないから。
そう伝えると、父は「今来た道の逆を行くのはどうだ?」と。
「それだと却って遠回りだし、道も狭いよ。来た道を戻ったほうが絶対にいいよ」
と説得するも、どうにも納得がいかない様子。
「じゃあ、この道を進んだら?」
「それ、Uターン必要だし遠回りになるから、むしろ危ないと思う」
と返しても、やっぱり釈然としない。
結局、私が車のナビを設定すると——
あっさり「来た道を戻れ」と表示された。
内心ちょっとホッとしつつも、父はどこか不満げな顔のまま帰路へ。
ただ、行きのルートと違うのは、パターン2の道を戻ること。
帰りの道に関してはパターン2の方が目印のファミレスもあり、分かりやそうだったので、
私もそちらを推奨することに。両親の乗る車を見送った。
両親の車を見送り、1時間ほど経ったころ、母から電話がかかってきた。
「無事に着いたわよ〜。お父さん、帰ってから“大口叩いてたわりには、これならぱぴこの家にも行けるかもな”って言ってたわよ」
あれだけ前編で億劫がってたくせに……。
と思ったら、やっぱり終わらないのがうちの父。
実家に戻ってから、今度は私が説明したルートについて、まさかのダメ出しを食らうことに。。
思いの外長くなってしまいました^^;
続きはまた明日。。