(26)新人の仕事
その後も出来る限り態度を変えないように努力した。
後輩でいるだけなら、どんなに優しくされても、ただの後輩として受け取れば、それ以上望まなくて済むから。
図書館疑似デートからしばらくしてから、相葉さんと二人で課長に呼ばれた。
来季から始まることが決定した新事業に関して、データをまとめて資料を提出するように指示があったのだ。
相葉さんの言ったとおりだ。
まだ新人だけど、いい機会だからということで、相葉さんからのフォローをもらいながら私が主体となって作業を進めるよう言われた。
初めて一からちゃんと任された業務。
嬉しいけど、身が引き締まる思いがする。
「相葉くんはよく見ていてやってくれ。水野さんにもひとりで作業できるようになってもらわないといけないから、その第一歩として、よろしくフォロー頼むよ」
『わかりました』
「わかりました」
一礼をして机に戻った。
席に戻ってから、相葉さんは良かったねというように顔を見て笑ってくれて、私もはい、と声を出さないで笑った。
すべては相葉さんの先見性のおかげだった。
この間図書館で下調べをしたばかりの内容で、知識もデータもそろっているから、調査に関しては課長から指示のあった項目を追加で調べる程度で済んで、作業はまったく問題なく進められた。
おかげで指示された期限よりも前に資料をすべて提出することができて、課長からすごく褒められて恐縮した。
今回のはわたしの功績じゃなくて相葉さんのおかげだから。
「全部相葉さんのおかげなんです。相葉さんが勉強されてるところにご一緒させていただく機会がありましたから」
相葉さんが図書館に誘ってくれなかったら、今頃はまだデータと格闘してる頃だろう。
「さすが、教育が行き届いているな」
と鈴木課長は相葉さんに声をかけている。
そう。相葉さんが知識はあって損はない、と誘ってくれたから。
席に戻って相葉さんの顔を見ると、にこっと笑って机の下で小さなガッツポーズをしてくれた。
「ありがとうございました。全部相葉さんのおかげです」
「そんなことないよ。波奈ちゃんが頑張ったからでしょ。データや知識はあっても、それをいい資料にするのはそれを作るひとなんだよ」
そんな褒めてもらって褒められ過ぎな気がするけど、すごく嬉しい。
相葉さんの役に立てたのとは少し違うかもしれないけど、相葉さんが誘ってくれたことを無にすることならなくて良かった。
頑張ったことを相葉さんに認めてもらえて、心から嬉しかった。
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