風花 12 同期で同室 | 緑の木陰で妄想日和

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(12)同期で同室

暑い日が続いて、汗ばむ日が多くなってきた。

入社してから三ヶ月が過ぎた。
大卒の男の子たちが三ヶ月の仮配属ローテーション期間を終えて、小瀧望くんがうちの課に正式に配属されることになった。

ちょっと調子はいいけど仕事は頑張る、かわいい顔と長身の、テンション高めで声の大きな関西弁の男の子。
「はい! 先輩! オレなんでもやります!」なんて、若干テンションが空回りしてる気がしなくもないけど、いい子だし、裏表のない感じで楽しくなりそう。

「ハナちゃん久しぶり! 元気やった? オレここになったん、よろしくなハナ先輩。いろいろ教えてな」
「うん、よろしくね。でも私が教えられるのってコピー機の使い方とか定例業務くらいだよ。私も難しいことは最近始めたばっかりだもん」

同期が部屋にいるというのはとても心強いから嬉しかった。
望くんの指導には、櫻井さんが付いた。
櫻井さんは望くんに、新人用マニュアルと、あの時私が本屋さんで相葉さんに勧められたのと同じ入門書を手渡して、今日明日の2日でこれを読み切って軽くレポートを書け、と言いおいて出ていった。 どうやら櫻井さんは厳しく新人を鍛えるつもりみたい。
おおげさなため息をついて机につくと、彼は猛烈な勢いでマニュアルと本に目を通し始めた。

お気の毒。
肩をすくめて、くすっと笑ってしまった。

とはいえ私も他人事じゃない。
最近は少し難しい業務も増えてきて、相葉さんに注意されることも多くなってきた。

『波奈ちゃん、さっきの資料はどのデータを使ったの? 配布先によって必要な数字が変わるからちゃんと指示書を確認してね』
『波奈ちゃん、これだと項目が足りないよ。依頼内容だけじゃなくて目的に沿って提案してあげてね』
『波奈ちゃん、そろそろ作業を始めないと下調べする時間が足りなくなるよ』

もちろん、注意されるのは私がいけないんだから、ちゃんと返事して頑張って仕事する。
とにかく範囲が広くて種類も多いし煩雑だし、業務全体に慣れるまではこれを乗り越えなきゃ。
あまりにもそれが重なるとやっぱりへこんじゃうけど、それを頑張ればステップアップできると思うし。
それに。

どんなに厳しく注意を受けることがあっても、それは正当な理由があってのことだったし、相葉さんは後で必ずフォローを入れてくれた。

『ありがとう、とても見やすい資料になったね』
『色使いがいいね。分かりやすいしイメージにも合ってる』
『会議資料の準備を早めにしておいてくれてありがとう。助かったよ』

作業が終わるとさりげなく褒めてくれたり、細かいところまで見ていてくれて労ってくれたり。
それを聞くともういっぺんで疲れが取れて、また仕事頑張ろうって気になるんだから、我ながら単純すぎておめでたい。
でも嬉しい。
もっともっと、仕事を頑張って相葉さんに褒めてもらいたい。
毎日、仕事は大変だったけど、相葉さんに会えるし相葉さんと仕事できるし相葉さんに褒めてもらえる。

相葉さんの好きなひとは誰なのかは置いといて、仕事はハードだったけど会社に来るのは楽しかった。



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