ねむろう
ねむろう
ねむってしまおう
夢の中でも、
ねむってしまおう
ゆめの中のゆめ
その中の、夢
ねむって
ねむって
ねむってしまおう
深くなくて、いい
すこしでも、いい
おだやかな場所
おだやかな、ゆめ
たのしいことも
ゆかいなことも
とどかない場所で
ねむってしまう
ねむろう
ねむろう
そとは、もう秋
秋のよながを
ねむってみよう
あくびをひとつ
その中の、ゆめ
おだやかな、夜
おだやかな、夢

……







(aujourd'hui)

粥を炊く
こつこつと粥を炊く
ふつふつと燃え上がる
ふつふつと炊きあがる
粥を炊く
そのままで粥を炊く
白いふつふつのまんまる
白いふつふつのまんまる





白粥に
虫が一匹、沈む
ふつふつと粥が白く沸いた
ふつりと、粥に虫が消えた
粥を炊く
呑み込まれて粥を炊く
白いふつふつした、あした
白くふつふつ燃える、あした










(aujord'hui)
ちょっとづつ
ちょっとづつ
どうにかなる
どうにかなる
一面の菜の花
いちめんのなのはな
ここはまだ見えない
ここはまだ見えない







いちめんのなのはな
せっせと種を蒔いた
いちめんのなのはなに
種が一粒、沈む、
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
呑み込んだ種から
またいちめんのなのはな









(aujourd'hui)
犬が笑う
猫が笑う
くたびれ果てた
ドアの外
犬が泣いても
猫が笑っても
寒い寒いねずみのメリークリスマス
寒い寒いねずみのクリスマス
ドアの外にはくたびれたねずみ
そもそも猫なんていやしないのだ
ねずみが怯える
クリスマス
寒い寒い犬のクリスマス
寒い寒いねずみのクリスマス



・・・



猫はどこかへ行きました
あれだけ姿を見せといて
モモもドッペルもいやしない
あっぱれ!最高のはたらきだ、
今年一番のお手柄だ
猫なんていたらクリスマスにならない
寒い寒いねずみの
クリスマス
犬にその意味がわかるだろうか
犬に意味なんてあっただろうか、
猫が笑った
ねずみが怯えた
哀れな犬はひとりきり
泣きも笑いもしないまま
白いその毛のくたびれた
黒ずんだ毛にねずみが哀れむ
寒い寒いねずみのクリスマス
今夜は犬も暖かく
寒いのはねずみで十分だ
猫はどこかへ行ったきり








(mercredi,24.decembre,08)
イチからゼロまで並べた数字と
48字のひらがなと
それよりもっといっぱいの記号が
ビールにさらさら流れて溶けた
弾ける泡と流された
その残骸をなめてみた
苦くてまずい
なまぬるさ
さらさら溶けてテーブルの下
踏まれる
潰れる
流される
モップか何かで吹いてこすって
汚い床に刷り込んだ
だいたいこれでいいのだ、全部
床に溶け込む踏まれて埋まる
これでいいのだだいたい、多分
これがいいのだ
ビバ!ライフ、…
コンクリートに寝転んだ














(jeudi,13,janvier,13)










リッターの中に風邪薬をひとつ
まぜるとひとつばくはつする
した
みた
ばくはつ
した
見て
かった

・・・





風邪薬の中に微熱をひとつ
いれれば今夜はつねつする
体温計は知らん顔
黄色い部屋を後にした
アトニス

原子
回路

・・・





共通したのは森の中から
回路がひとつ、通過する
アトムは今日も知らん顔
はつねつなんて知らん顔
おとなしく燃えた薬を混ぜて、
眠る、
朝の部屋のなか
黄色い顔は微熱中
ほんとだろうか
本当だろうか
アドニスは今日も知らん顔
風邪に負けじと薬をひとつ
爆発をしんと待っている












(vendredi,25,juillet,08)


今から甘い蜜を吸う
今だけ苦い夢を見る
泥の中から掬い出す
優しい泥に溶けた蜜
甘い、優しい、案の定
胃の中然り、
甘い蜜
スプーン一杯
夢に溶け込む
とろける胃液に紛れ込む
苦い蜜の目
冷たい視線の
苦い蜜の目
夢の中
今から優しい泥に溶け込む
溶け切った胃にも泥ならきっと
蜜なんかきっと与えてくれない
甘ったれなら、もういらない











(samedi,31,octobre,10)
オーライ、オーライ
ハッシャバイ
壁に座った
穴に隠れた
オーライ、オーライ
ハッシャバイ
ララバイ、おやすみ
こもりうた
穴にはまったシロウサギ
クックロビンとお墓のネズミ
オーライ、ララバイ、
おやすみ、ララバイ、
ゆりかご、ゆらゆら、
ハッシャバイ













(dimanche,06,juin,10)
だいたいのものは
そんなふうにして
眠ってしまう
春の日
春の日
だいたいのものは
そんなふうにして
眠ってしまった
春の日
ゆっくり、
ねっとり絡んだ
夏の日
夏の日
ねっとり絡む
夏の日
暑い日
春の日がゆっくり眠ってしまった、
夏の日
あの日
毎日毎晩
一日一日
ねっとり絡んで
淀んだ春の日
春の日
あの日
タオルケットにくるまって
淀んだ夜に沈んで眠る
春の日
夏の夜
とりあえず眠る、
タオルケットにくるまった















(lundi,26,julliet,2010)

布団の中で朝を待つ
メーベルはわたしを笑うだろうと、
思うにつけても懐かしい
思うにつけても不憫なメーベル
どうして頭が落ちたのでしょう
メーベルは何も悪くなく
メーベルに何ら罪もなく
すべすべと日に焼けたメーベルの肌は
下品というほど黒くもなかった
ロシア人ほどの白さももたない
ましてやアジアの大量の肌
あんなふうに決して黄色くなかった
あんなふうに決して土色じゃなかった
銅をならしたようにきれいな
その肌に薄いブロンドの髪
二つにくくって肩まで流れる
髪と一緒にその首が落ちた
メーベルの首はごろりと落ちた
髪のブロンドもごろりと落ちた
左手に抱いた熊の人形
しっかり掴んだまま落ちた




・・・




メーベルに
時おり埃が積もります
たまに掃ってやるのです
白い木の椅子に座ったまんま
弱虫な執事を黙らせた
椅子はメーベルの友達です
奈緒子という名の白い椅子
メーベルはいつでも奈緒子と一緒
ふたりは仲良しだったから
メーベルが癇癪を起こしても
奈緒子はメーベルを知っていたから
今でもメーベルはクリスマス
奈緒子と一緒にクリスマス
他にも残した白い熊だの
ごみにそっくりな灰色の猫だの
奈緒子の足元のマリオネットが
いるからきっと大丈夫
きっと今でも大丈夫
落ちたメーベルのその首を
奈緒子はきっと受け止める
きっとメーベルはクリスマス












(jeudi,25,decembre,08)