久しぶりに猛暑から解放されて、のんびりしていると
午後2時過ぎ
母が出かけると言う。
「飴がないので買いに行きたい。」と言い張るので
今日は暑くないし
熱中症の心配もないから
「出かけてもいいよ。」と送り出した。
探しに行くのは夕方5時過ぎになるからね、とだけ
念を押しておいた。
「大丈夫よ。
ちゃんと自分で帰ってくるから
心配しないでちょうだい。
お迎えもいらないからね。」
自信満々で、出かけて行った母。
1時間後
エアータグを見ると
いつものバスに乗っている。
永遠に家に帰って来られない路線だ。
夕食の支度をしてから迎えに行くつもりでいたら
誰かとお喋りしながら母が帰って来た。
乗っていたバスを途中で降りて
迷っているところを
親切な方が声をかけてくれて
一緒に家まで送ってくれたのだ。
まだ若い男性だった。
今日は雨だから傘を持って行ってねと
あれほど言ったのに、傘を持たずに行って
その親切な方が傘に入れてくれて一緒に歩いてくださったのだ。
母は上機嫌で家の中に入ると
暑いといいながら
しばらく横になっていた。
驚いたことに
夜になったら
自分は今日はどこにも出かけなかったと言う。
親切な方に家まで送ってもらったのも
すっかり忘れている。
張り合いがないわね。
こんなおばあさん、嫌だ。