母が

財布を見せて

「空っぽなのよ。自分のお金なのに、自由に下せないから。」

キレ気味に言うので

 

その度に同じ説明をする。

 

「前にキャッシュカードを失くして、

大変だったでしょ。

自分から私に管理してって頼んだんだよ」

「銀行に行くのだって、

ネットで予約しなきゃいけないから

孫に頼んだでしょ。

キャッシュカードを

警察まで取りに行ってさ、

全部私がやってあげたんじゃないの。

忘れたの?」

 

母がそんなこと、何も憶えていないのは

承知しているが

一応懇々と説明する。

 

当時、本当に大変だったのだ。

警察も駅から遠くて、難儀したし。

 

母は悔しそうな顔で

決して納得していないけど

頷かざるを得ない。

 

こんな時

ちょっとかわいそうになるけど

同情は禁物だ。

 

後で後悔するのだから。