会社から帰ると
家の中が真っ暗で
犬が服を着せられていた。
犬のフードボウルに、チキンカツが入っていた。
全くね、とうんざりしながらゴミ箱に捨てた。
時刻は午後6時。
前にも遅くなったことがあったから
夕食の準備をしていた。
ところが
7時を過ぎても帰ってこないので
通報したら
すぐ若い巡査さんが自転車で到着。
家の中で事情聴取受けている間
犬は目の前でフードを食べていた。
生活安全課から男女2人が
普通車で到着、巡査と交代した。
夜、ひとりになった時
まず寝ようと思った。
昔から、母に何かあると、
必ず夢に出てくるから
とにかく寝る事だ。
いつもより早い時刻に就寝。
母が帰って来た夢を見て目が覚めたら
固定電話が鳴った。
交番からだった。
夜中の2時半。
今すぐ迎えに来てくださいと言う。
行った事のない場所だ。
帰って来た母を見てびっくりした。
鼻の下出血と擦り傷。
口元が腫れて人相が変わっていた。
本人は記憶がない。
オデコもうっすらアザ。
手足も擦り傷、出血痕。
翌朝、膝が痛くて歩けないと言うので
整形外科でレントゲンとCTを撮った。
骨折はしていなかった。
病院の行き帰りは、無線タクシーを使った。
タクシーの乗り降りも一苦労で、
本人痛いを連発、
病院内は車椅子を借りた。
隣の叔母が一緒に来てくれて助かった。
最初に訪問した巡査さんが
間違えて隣に行ってしまったので
当日は一緒にいてくれたのだ。
次の日
頭のCTを撮るため
同じ病院の脳神経外科を受診。
結果は異常なしで、医師は
「夜中迷子になったのが、既に痴呆なんです。
でもこの年齢で寝たきりにもならず、
こうやっていられるのは健康です。
私たちも歳を取ったら同じようになります。」
ハキハキと明るい口調で、なんだか励まされた。
今まで母の事を、痴呆だと思っていなかったけど
警察の方から聞かれた時
そばで叔母が「はい、痴呆です。」と
はっきり言い切った。
家族は認めたくないけど、ハタからは歴然だった。
だから
姉の旦那さんが心配して
ずっと前から病院行こうと勧めていたのだ。
生活安全課の方が色々教えてくれた。
下着に名前と電話番号を書いておく。
靴の裏の地面につかないところに電話番号。
警察官は見たらピンときます。
服のタグにも番号を書いておく。
役所でケアマネジャーの手配できますよ。
やることがいっぱいあり過ぎて
どこから手をつけたらいいのか
わからない。