眠れない夜に何をするかと言ったら、
特にないのである。
ただ、寝返りの回数が増えていくのだ。
そんな夜。
最近開いていなかったラジオアプリを
起動してみたりする。
深夜にリアルの世界で会ったこともない誰かが話している。
一目惚れ主義の私であるが、
初めてのパターンで惹かれた瞬間でもある。
眠気が飛んでいく代わりに、
電波越しに恋心が生まれました。
東京のキーステーションとは
もはや距離など存在しないのだ。
しかし冷静になれば物理的な距離はあるわけで。
ただ物理的な距離が縮まるわけではないが、
確かに私は受け取っているという意思表示はできるのだ。
届けたい思いがあれば、こちらから送り返せるのだ。
そう、番組宛にメールを送り続ければいいのだ。
急に小っ恥ずかしくなるタイミングもあるが、
そんな時はアドレスを変えて送るのだ。
読まれることもなければ、
本人に気づかれることもないかもしれない。
それでも粛々と綴るのだ。
拝啓
時候の挨拶も浮かばないほど、
頭のスペースは埋め尽くされています。
もう前略使えよって感じなんですが、
しっかりと綴ろうとした結果のせめてもの思いです。
さて、ある夜長の日にそれは訪れました。
眠れない中、
安心安全の蛍火をわずかでもとの思いで、
ラジオをつけました。
眠ることを諦めなかった自分を褒めてあげたいです。
イヤホンから聞こえてきた声は
蛍火どころではなく、
もうあれはミラーボールほどに
ギランギランしていました。
本来であれば我先と集まり踊り狂ってましたよ。
良かったですね、僕が布団の中にいて。
クイズの問が読まれる前に
ボタンを押してしまうほどの速さで
自分の中でピンポーンと鳴り響きましたよ。
それはもうテンション天上げの爆上がり。
鼓動がスピーディーになる感覚。
その時の胸の高鳴りにイヤホンをぶっ刺して
あなたに聞かせてあげたいほどです。
僕はその日、違う意味で眠ることを諦めました。
サンボマスターも言っていました。
”昨日のあなたが嘘だとう言うなら、昨日の景色を捨てちまうだけだ”
素敵ですよね。
それほどまでにあなたを全身全霊で肯定する。
声しか聞いたことないのに、
背中からあなたをみたことないのに、
何よりも会ったこともないのに、
そんなあなたにこんなことを思っているんです。
かんたん酢ぅーーーよりも簡単というか単純と言うか。
なんなんでしょうかね。
電波を介しているはずなのに、
テーブルを挟んで雑談している、
ソファーに並んで笑点を見て笑っている。
そんな安心感を感じるんですよ。
サンボマスターはこんなことも言ってました。
”心の声をつなぐのが これほど怖いものだとは”
怖いはずなんですよ、本来であれば。
でもこうしてメールを送れているのは、
作り出してくれている空気感の
おかげなのかもしれません。
最近、昔見た映画をよく見返しています。
同じ作品であっても過去と現在の自分では
感じ取るものや視点にも変化があり
「あーこれが時の流れか」と成長か衰退かもわからない感情を抱いています。
ただ、時が経ってもこのラジオに向ける感情はきっと変わらないでしょう。
満開の桜が涙の如く散ろうとも、
その先には筏となり得る未来もあります。
一つの花びらも見逃さないように見守っています。
いささかおこがましいかもしれませんが、
せめても、削れる心が風で飛んでいかないよう
私は包み込んであげたいと思っています。
敬具