ダイビングにおいては理論ほど重要なものはありません。
一体スポーツを始めるのに、ボイル・シャルルの法則やヘンリーの法則、不活性ガスということを学ばなければできないスポーツがほかにあるでしょうか?
いくつか例を挙げます。
例えば、初心者で耳抜きができない場合、少し浮上して耳抜きの再チャレンジをするように言われます。多くのダイビング団体のインストラクターマニュアルにも書かれています。
それはいったいなぜなのでしょうか。
それは、肺にかかる圧力と耳のバルサルバ器官の圧力差によるもの
なのです。
何度も申し上げていますように、浅いところの方が、圧力差は激しい。
少し浮上すれば、肺にかかる圧力と中耳にかかる圧力差に変化が生じるから、少し浮上したほうが、いわゆる耳抜きがしやすい。
一方、昔は頭から潜っていましたから、中耳にかかる圧力の方が肺にかかる圧力より高い。だから耳抜きはしづらかったわけです。
その場合には頭を上にして耳抜きをした方がしやすかったのです。
このように耳抜きひとつとっても、肺にかかる圧力と耳にかかる圧力の差、そして浅ければ浅いほど圧力差の割合が高くなるということが少し浮上して耳抜きに再チャレンジしなさいという理屈なのです。
また、初心者が海に潜るとき(エントリーにおいて)なかなか沈まないというのは、心理的な問題です。どうしても深い呼吸ができず、呼気を吐ききれないわけです。
初心者がエントリーで沈まない場合には、ウエイトを増やしても何の解決にもならないわけで、初心者の目をじっと見て、呼吸を合わせてあげる、つまり、私の呼吸に従って息を吸ったり吐いたりしてくださいといえば、ほとんどの方はスムーズにエントリーをすることができます。
ですから、ある初心者ばかりのところで、私が初心者を適切に沈めて管理しました。その際に、やはり初心者のお客様が「すごい力ですね」と言いました。
重量と質量を混同しているのですね。
足場のないところで私がものすごい力で初心者を沈める。
これは不可能。
足場がないのだから、質量という考えからいけば、ものすごい力をもって初心者を沈めれば、私の体が浮くだけではないですか。
初心者が海にエントリーの際に潜行できないとか、さらに耳抜きができないというのは、心理的な要因で呼吸のコントロールが出来ていない。
その際、ウエイトを増やすようにアドバイスするインストラクターは信用できない。