ある中学生が、学校で漢字の部首を述べなさい、例えばこの漢字は何へんなのか、何かんむりなのか、よくわからないということで悩んでいる、という質問を受けました。
私の回答は、以下の通りです。
漢字は、確かに、 主に 中国から日本に伝わってきた文字です。
しかし、単純なものではなく、アジアの漢字文化圏に大きく広がっており、単に中国の文字と考えてはいけない。
契丹文字とか、チュノムとか、さらには日本のひらがな、カタカナにも影響を与えたといわれる、非常に複雑で長い歴史があります。
今から見れば、これって本当に漢字なの、というような、とても難しい漢字もあります。
つまり漢字というものは、数千年にわたる歴史の中で、アジアに広まった文化ですから、単純にこれは漢字で、あれは漢字じゃないと言えないぐらい難しいのです。
そしてその、3000年から4000年とも言われる漢字文化において、現在の日本のように文部科学省が当用漢字→常用漢字を決めたり、学校で漢字の書き順や送り仮名についてスタンダードな指導をしたりすることもありませんでした。
漢字ができた当時は、漢和辞典というものなどあろうはずがありません。
現在の日本には、どんな書店でも漢和辞典が売っていて、この漢字の部首はこれと書いてありますが、それは後になって分類されているだけです。
様々な漢字文化圏において、ある日統一的に、部首を考えてから、どこかの学者が作り上げたわけではありません。
どこまでが漢字というのでしょうか。
たとえば、現在の中国の簡体文字は漢字なのでしょうか。
部首はのちの学者が漢字をまとめる時に作り出した概念です。
ですから、学校教育で漢字の部首を述べよという問題自体が、そもそも間違っているのです。
漢字から派生した日本のひらがなやカタカナも、漢字ともいえるかもしれません。
ワ行の「ゑ」という「ひらがな」を書いてみてください。
覚え方は、漢字の「恵」を崩したものと思えば、覚えられるでしょう。