東京で教えているときに、麻布中学の最下位の生徒をマンツーマンで指導してくれと頼まれました。

ところが実際教えてみると、なぜこの子が麻布で最下位なのか、不思議でなりませんでした。

そこで、学習のヒストリーと原因を探ることにしました。

 

その生徒は、もともと帰国子女で、ロンドンで暮らしていました。



 

日本語力をチェックしてみますと、むしろ一般の中学生をはるかに上回る日本語力を持っている。

この理由は、海外の日本人学校に通っている生徒には、かえって保護者が日本語教育に注意をするということと、ロンドンの日本人社会で育っていますから、周りが大学教授とか外交官とか商社マンとか、こういった方ばかりだそうです。

だから、日本語のスピーチ・レベルは非常に高い。

中学生にしてはびっくりするような言葉を使えるし、敬語の使い方も完ぺきだった。


 

これを私は、クイーンズジャパニーズと呼んでいます。

 

さてそこで、言語能力にも家庭環境にも問題がなく、本人の能力も抜群なのに、麻布でなぜ最下位なのかの分析にかかりました。


 

まず、今までの麻布の定期テストや、独自のプリントで授業されているため、そのプリントも全部持ってくるように言いました。

 

麻布の卒業生にも協力していただき6年間のノートやプリントを持ってこさせ全て目を通しました。さすがに6年間の問題が全て6年間を通した通し番号なのは驚きました。これこそ中高一貫教育ですね。単に中学校と高校が同じ場所にあるというのは一貫教育ではありません。

 

最低限職員室が同じでなければなりません。中1教えてる先生と高3教えてる先生が机を並べていることが重要です。

 

この分析は、1時間やそこらで済むものではない。

 

途方もない時間がかかりました。例えば3片の長さから三角形の面積を求める問題がありました。ヘロンの公式を使って求めればいいのかと思うとそうではありません。全部のプリントの問題を見てみると三角関数の練習として出ているわけです。しかも余弦定理も第一余弦定理と第二余弦定理と分けて教えているわけです。本人の答案も分析しました。三角関数は円を書かずにグラフで解いているのですね。それに合わせて学校と矛盾しないように指導しました。


中2の期末試験です

 
例えばここでこの生徒は答案においてヘロン三角形の面積を求める際にルートの中を全てかけていないということも重要です。どうせ素因数分解するのだから素数の積にした方が楽なのです。ただ10は5と2に分けるように指導しました。




 中2の日本史の方が分かりやすくて凄さが見えるでしょう。






したがって教える側も単に余弦定理という言い方をしてはならないと注意して指導しました。単に余弦定理により証明しなさいと言うと学校で習ったことと食い違いが出てくるからです。

 

その分析をする際には、電話も取り次ぐな、これからずっと授業まで分析するということで、授業前まで別の部屋に言って分析しました。2時間の授業ですが10時間以上準備がかかるのです。

 

理事長は、「先生の給料のうち週に一度、一日分を丸丸使われるのだから、生徒から月に30万円もらっても元が取れないな」と、苦笑いしていました。


 

その分析で得られたのは、


 

1 もともと地頭が良いだけで中学入試に合格している。つまり、量をこなす訓練をしていたり、時間をかけて勉強するという習慣を持っていない。

2 麻布中が独自のカリキュラムで授業を進めている。

例えば解と係数の関係が出てきても、虚数は習っていない。そうすると、解が存在しないのに解の和が存在するということになる。中2で三角関数が出ている。


 

以上の理由により、練習量が足りない、という結論になりました。練習量が足りないと言っても本人がサボっているわけではありません。対応する問題集がないのです。

 


 

そこで、2つの対応策が考えられました。


 

A 麻布の授業よりさらに進んで卒業する。

しかしこれは、もともとどんなにできるといっても、相当な先取り学習をしているところにさらなる先取り学習を私がすれば、本人の負担が増えるので、拒否しました(拒否というのは、私一人で決めているわけでなく、塾全体で会議をして決定しているからです)。


 

B Aの対案として、中1~高1の問題集を与え、麻布のカリキュラムに合わせた形で問題を全部選んで練習させ、宿題を出す。


 

結局Bの対応策を実施することになりました。

しかしこれは、大変な仕事になりました。

麻布中のカリキュラムに合わせて練習をさせるには、すべての麻布中学のプリントを勉強して、問題を自分で解いてみて、カリキュラムに合致しない解法を抜くしかないからです。生徒独自の問題集を作ったわけです。

 



 

ずいぶん手間がかかりましたが、自分が麻布中学の生徒になったような気もしまして良い経験になりました。こっちもはまってしまいました。もう一度中学1年生に戻って麻布の先生に6年間習いたいと思ったぐらいです。

 

結局中1から教えて、東京大学にトップクラスで入学しました。


 

個人指導ですから月に相当な費用が掛かりましたが、塾側から見れば、私の講師報酬の方がはるかに多かった。

それを認めた日吉ゼミの松本一博先生は、非常に偉かったと思います。

 


成績が悪いから勉強しろと言うのであれば誰でも言えるわけです。

 

その原因を探して対応するのが塾講師の腕前です。
 
補習塾とか個別指導ほど難しいものはありません。ある有名な中学校の生徒に平行とは何かと聞きました?どこまで行っても交わらない線と答えたならばじゃあ空間でねじれの位置はどうなるのかという展開を考えていました。ところが学校では互いの直線から二つ以上の共通垂線が引けるということと習っているとということでびっくりしました。
 
少し考えてこれは学校の先生が将来非ユークリッド幾何学を説明するための伏線だと判断しました。
 
球面幾何学の例を参考にしてください。
 
 
 
 
問題は保護者でこのことを理解してる人が何人いるかということです。
 
なおこのブログ全体に通じることですが今教えてる生徒であればネットにかけるはずがありません。昔のことだからかけるわけです。今現在はどうなのか今麻布に通ってらっしゃる方はどのような勉強方法をしたら良いのかということについてはお答えできません。