ある中一の英語の教科書から
英 文
1. “Good morning.”
2. “Good morning, Miss Brown.”
3. “This is a ball. What’s this?”
4. “I don’t know.”
5. “It’s an orange.”
6. “Oh, I see.”
7. “Good-by.”
8. “Good-by, Miss brown.”
私の危険な訳
1. 良い朝ですね。
2. 良い朝ですね、ブラウンさん。
3. これはボールです。これはなんですか?
4. 私には知識がありません。
5. それはオレンジです。
6. おお、私は見えました。
7. 神があなたと共にありますように。
8. 神があなたと共にありますように、ブラウンさん。
注
1.と2. 「おはようございます」というのは、農耕民族あるいは漁業に従事する民族で、朝が早いということが美徳であることを前提としていますが、世界に通用する文化ではありません。
朝が早いという挨拶ではないのは、早くても悪い朝があるのでしょう。
今でも「夜の仕事」というと、あまり良いイメージはありませんね。
非常に熱い国では、昼間は寝ていて夜に活動します。
エジプトでも、夜の11時や12時に商店街が家族連れの客でにぎわっていることがある。
アラビアン・ナイトに対してアラビアン・モーニングという言葉は聞いたことがありません。
「おはようございます」と「Good morning.」とは、意味は全く違います。
2.と8 Miss Brown は「ブラウン先生」と訳せと、一般に学校では言われますが、もともと「先生」という概念は、欧米にはありません。もちろん年長者に対する敬意はありますが、先に生まれた人間を先生と呼んで無条件に上にたてるというのは、主に儒教思想に由来するものです。また、ホテルのチェックインの時に、自分の名前の前に、Mrを囲むところがありますね。

ネパール ルンビニで撮影
(自分で.....さんと書く人はいませんよね。)
海外に手紙を出すときに、差出人として、自分の姓名の前に Mr を付けることもあります。 Mr=・・・さん でもないのです。
brotherに兄・弟の区別がないのは、なぜでしょうか?
(参考:末子相続が、ある文化では何故有利なのか?)
なお「ブラウン」さんと、色が姓名になっていることは、おそらく、さまざまな肌の色の人が混在したことによる結果だと思われます。
6. Oh, I see. このsee は、学校では、わかるという意味だから、私は分かりましたと訳すと思いますが、そうではなく、英語では、「見ること」=「わかること」であります。
たとえば、
Show me the way to the station. の「show」とか、
illustrate
insight
look into ・・・・・・・・・・・などなど。
このように、「見る=わかる」、という概念があります。
また「目からうろこが落ちる」(=知らなかったことが劇的に理解できるようになった)というのは聖書(使徒行伝:Πράξεις τῶν Ἀποστόλων より)の言葉です。
ですからここでのseeは「分かる」と訳しなさいと、教えるのではなく、英語では、わかった時に「みえた」とか「見える」ととらえるのだ、というように教えるべきだと思います。
4、「そんなことは知らないわよぉ!」というのを英語に訳してください。
「そんなこと」 が主語?
日本語では、「知る」と「分かる」を微妙に使い分けている。さらに「悟る」と「覚悟する」の2段階がある、この2つは英訳が不可能である。
7と8 Good-by. は、辞書を引けば分かりますように、神があなたと共にありますようにという意味ですから、日本語のさようならとは、まったく違った意味です。
日本語のさようならというのは、「そのような(さ)状況(よう)であれば、おいとまさせていただきます」、という意味です。
なおこの God という単語は、日本語の「神」という概念ではとらえられないものです。
英語で会話をすればグローバルとは限りません。このように文化の違いや背景を理解したうえで、英語を学ぶべきです。
英語が話せれば国際人というのは100%間違っています。