大変困ったことに、学校や塾で教えていると、とりわけ小学生には、漢字について次の3つの誤解があるようです。
1. 漢字の書き順には決まりがあるのか。
2. 漢字の「とめ・はね」には決まりがあるのか。
3. 漢字の送り仮名には決まりがあるのか。
漢字の書き順が間違っているとか、送り仮名が間違っていると指摘される先生がなかにはいらっしゃることも事実です。漢字の書き順に正しいとか間違いとがあるのであれば中国で漢字の書き順は日本と全く同じなのでしょうか?
一例をあげてみましょう。
《木ヘン》はなぜはねてはいけないのでしょうか。
こういったことについて、京都大学教授の高名な阿辻哲次先生が、「漢字再入門」(中公新書)という本で、具体的に指摘されています(ただし、送り仮名については述べられていません)。
まさに、目からうろこが落ちる。今まで教えてきて、いろいろなストレスを感じていたことが一気に解決した思いであります。
本書50~51頁にまたがる項では、次のようなことが書かれています。
《木》ヘンや《手》ヘンははねてもとめてもかまわない
(前略)
漢字の筆画で「はねる・はねない」などにこだわる先生は、「厳しく指導している」のでもなんでもなくて、どのように書くのが正しいのか自信をもって指導できないから、単に辞書や教科書の通りでないと正解にできないだけのことなのです。つまり正解か誤答かを判断する論拠として、教科書や辞書に印刷されている字形にしか頼れないというのが実情ですが、しかし先生方の多くは、その教科書や辞書で印刷されている形が、どこでどのように定められ、またこれまでどのように変化してきたかなどについては、まったく考えようとされません。
(以上引用終)
なお、本書の記述内容を部分的に取り上げると、誤解を招く恐れもあります。
本ブログを御覧の方は、本書全体をぜひとも御一読されることをお勧めいたします。