社会が成熟するにつれて、さまざまな商品の選択肢・購入が増えてきます。
今問題になっているもののひとつに、出版不況があります。
確かに、本が売れないという事実があります。
さて、書店に行ってみると、付録のついた雑誌が増えております。
私が身につけている時計も雑誌の付録なのです。
690円程度の雑誌の付録として、時計がついているのです。
その時計が欲しくて、私もこの雑誌を買いました。雑誌の記事は読んでいません。
中には、どう見ても雑誌よりは付録のほうが高いのではないかと思われるような、ポーチ、財布、こういった付録がついている雑誌もあります。
しかしこれらは、雑誌が売れないための弥縫(びぼう:取り繕うこと)策に過ぎないのであって、雑誌が売れない本質的な解決にはなっていないわけです。
私は個人的には、本が売れない、雑誌が売れないというのは、内容がくだらないからであり、決してインターネットのためではないと考えております。
また、本が売れないため、最近では非常に過激なタイトルの本を売るようになりました。
ひとつ、例をつくってみます。
① 現代論理学入門
② 日本人なら知っておきたい現代論理学入門
③ 知らないと恥をかく!現代論理学入門
④ 成功する人は必ず実践している現代論理学入門
⑤ 現代論理学を知っている人はなぜ早死にしないのか
こういった形で、どんどんエスカレートしています。
たとえば、「2013年、**国と~~国が日本を攻めてくる」という、まるですぐにでも戦争が始まるかのように書いている新書がありますが、これも、ここまで出版業界が苦境に陥って、目先の利益を確保しようとしている証左であります。
2014年になれば、この本はどうなるでしょうか?
絶対にロングセラーになることはありませんね。
まさか今度は、「2015年に**国と~~国が日本を攻めてくる」という改訂版でも出るのでしょうか?
特にひどいのは、当ブログでも指摘したように、医療に関する書籍であります。
たとえば、「がんにならない人が実践している7つの方法」とか、
「++すれば病気にならない」とか、
「病院に行ったら医師に殺される」とか、
このようなセンセーショナルな題の本がでています。こうなるともう、脅しですね。
ビジネス書でも、「成功している人が実践している7つの方法」とか、
「年収1億円を稼ぐ人が使っている手帳」とか、
「成功者がしている3つの誰も知らない習慣」
などという本がありますが、本を1冊読んだだけで、社会で成功したり、手帳を買い替えただけで年収1億円などと、そんな方法があるわけありません。
これも、ここまで出版業界が追いつめられている証拠であります。
また、CDが売れないからと言って、ポスターやグッズ、あるいは「握手券」をつければ、確かにそれを目当てにCDは売れることになりますが、長期的に俯瞰すれば、自分で自分の首を絞めているのであって。音楽産業の崩壊につながります。
本当にいい歌が歌える歌手を発掘してそれを育てる。
そうすれば30年後、40年後でもCDは売れるでしょう。
個人的な趣味ではありますが、いくつか例を挙げます。
岩崎宏美は、若いころから歌がうまかったのですが、技術にまかせて歌う傾向があったように思われます。
一方、年齢を重ねるにしたがって、それなりに大人が聴ける歌を歌われるようになりました。最近では、益々歌に深み・情感が加わり、本当に素晴らしい歌を歌われています。
彼女の歌の中に、「聖母(マドンナ)たちのララバイ」という曲がありますが、これにはいくつかのバージョンがあります。
若いころに歌ったものと、現在歌ったものでは、深みとか重みというものが、まったく違うように思われます。
この「聖母たちのララバイ」については、「益田宏美」の名前で、妊娠中に録音したバージョンがあり、これは大変な優しさに包まれた歌唱なのであります。
アイドル路線としての歌唱と「実際にお腹の中に新しい命を宿した聖母」の違いです。
ところが、このCDは、長らく絶版になっておりまして、入手が困難でした。
岩崎宏美さんのコンサートに行ったときに、御本人が「私は一度姓が変わり、元に戻りました。ずいぶん大変な思いをして、振り返りたくありません」と言っておられました。
その時に私は、益田宏美の名前で出ているCDが随分と手に入らなかった理由がわかったわけです。
24歳の「聖母たちのララバイ」には、24歳の「聖母」がいます。
60歳の「聖母たちのララバイ」には、60歳の「聖母」がいます。
ですか60歳のAKB48には何が残るのでしょうか?
また、平原綾香さんも、少なくともその場限りで消えてしまうような歌手ではありません。
おそらく10年、20年後でも、私は平原綾香さんの歌を聴きたいと思います。
つまり、社会全体でこういう現象が起こっている。
「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉がありますが、それぞれの業界・会社が目先の一時的な目先の利益を求めるがゆえに、長期的な展望に立たずして業界をつぶしてしまう。