今まで述べてきたことは、決してパック旅行が悪いとか、個人旅行がよいなどということを言っているわけではありません。


個人旅行は、パック旅行に比べて大変な準備が必要ですから、それだけ準備段階における勉強や研究が必要だというわけです。



その分、色々な下調べが必要で、これが経験値の向上になるのです。ヨーロッパの美術館に行けば、中には、一日かかっても見切れないところもありますが、個人であれば、好きなだけいることができるわけです。


日本であれば、ものすごい行列ができるような美術品が、さりげなく飾ってある場合もあります。


美術館に行って、ふと階段を見上げると、エゴン・シーレの「死と乙女」が飾ってありました。見た瞬間に、それこそ、体に電撃が走るほどの衝撃を受けました。日本と、光の具合が違うわけですね。

ヨーロッパの淡い光。


その中で見てこそ、エゴン・シーレの絵を見るのにふさわしい、と感じたわけです。



また、個人旅行であれば、あまり有名でない観光地に行くことができます。

前にも述べたように、ドイツというと、やはり、ノイシュバインシュタイン城とか、ビール、ソーセージ、ホフブロイハウスで大騒ぎ(遅い時間に行った場合)というイメージがありますが、これは、南のバイエルン州のことです。


北のハンブルクを中心とする、ハンザ同盟に至る地域というのは、もともと別の国でありました。


ハンブルクの港に行って、腰を掛けておれば、世界中の国から船が来ていて、おもしろいことに、船の到着に合わせて、その船の国籍にしたがって、国歌を流すわけです。一日中いても、飽きることがありません。


そして、ドイツの北というのは、いわゆるエリカ、ハイデ、ヒース…という花でも象徴されるように、非常に落ち着いた、静かな街並みであります。


ふらっと、ドイツのトラベルミュンデという街を車窓から見れば、きれいな海岸があったので、その街で列車を降りてみました。


おそらく、この街に行く日本人客はほとんどいないでしょうが。



海岸に降りてみると、ちょうど、ルキノ・ディスコンティの映画のような海岸線があって、そこには、籐でつくられた籠があり、体を休めることのできる場所があったので、そこに横たわって、非常に静かなひと時を過ごしました。




ドイツでは、北の文化は南と随分違います。

決して、ドイツは、ソーセージとビールの国ではありません。

もちろん、ドイツ人がすべてソーセージを食べているわけではありません。


ハンブルグでは北海で取り立ての魚料理がお勧めです。



また、イタリアでも、コモ湖やマジョーレといった、いわゆる湖水地方というのは、イタリア風であり、なおかつスイス風であり、非常に魅力的な場所であると思います。

南と北では、ずいぶん文化が違う。そして、もともと南イタリアと北イタリアが統一されたのは、歴史上、カブールとかガリバルディによって、ごく最近のことであったわけです。



もう一つ、海外パック旅行においては、その国の一番良い時期に合わせて行っているわけです。


北欧において、「白夜」という、ほぼ一日中太陽が沈まない現象があります。


これは非常にロマンティックな響きを与えます。


しかしながら、白夜というものがあれば、地球の公転を考えれば、その反対に、一日中太陽がほとんど登らない時があります。

それを「極夜」と言います。


しかし、その「極夜」を訪ねるパック旅行を企画して、一体、だれが参加するでしょうか?




「皆さん、北欧につきました。今は「極夜」ですから、薄暗いですね。一日中暗いので何も見るものがないので、一日中ホテルで寝ていてください。」・・・・これでは、誰も参加しませんよね。

スイスや北欧は、人気のある観光地ですが、それは、夏に、氷河であるとか、涼しそうな場所を出されるからそういうものだと勘違いするわけであって、冬に行けば、こんな生活の厳しいところはないわけです。






私は以前、「モンゴル厳寒旅行」という記事を書きました。モンゴルに真冬に行くような、変人は、そういないかと思われます。

旅行ガイドには、モンゴルの冬は観光に適していないと書いています。

ですから、モンゴルに観光に行ったのではありません。




モンゴルには、夏があれば冬もあるわけであり、冬に人がいないわけでなく、当然、マイナス20度やマイナス40度という中での生活もあるわけです。

ですから、ずいぶん向こうで物珍しがられましたが、なぜ真冬にモンゴルに来たのかと聞かれたので、私は、日本で発行されたガイドを見せて、こう答えました。



「日本の旅行ガイドには、このとおり、モンゴルの夏の写真はたくさん掲載されているが、冬の写真は1枚も載っていませんね。でも、冬には冬のモンゴルの生活があるはずですので、あえて来たわけです」




そうしてみると、いわゆるモンゴルのゲルの写真はすべて、観光用に作られたものであることが理解できました。



夏はどんなに暑くても何とかなりますが、冬のマイナス20度とか、場所によってはマイナス40度にもなるところでは、命の危険さえあります。


もともとゲルというものは非常に小さく、寒さから身を守るために、基本的に表面積を小さくすべく球形になっており、中で火を焚いて、一酸化炭素中毒にならないように小さな煙突が出ていて、ゲル全体が炬燵のようになっているのです。




何十人も泊まれるような、開放的な入口を持つゲルというものは、観光客用です。




UBQ数理フォーラム代表:長山豊のブログ

モンゴルのゲル。寒さから守るために周りを板で覆っている。



UBQ数理フォーラム代表:長山豊のブログ

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日本人慰霊碑。ソ連に抑留されて亡くなられた方はシベリアだけではありません。当然観光パック旅行ではいけない。


また、モンゴルに行くと、正月にはレストランでは酒類が一切販売されませんでした。

これはどのガイドブックにも掲載されていませんでした。もしかしたらパック旅行では特別に、お酒が飲めるのかもしれません。



帰りに、飛行機で同席したモンゴル人で合衆国に留学中の大学生に聞いてみると、酒害防止のため、記念日などの酒の提供をしない日を定期的に設けているのだそうです。




また、冬には日本からモンゴルへの直行便がありませんでしたので、韓国の仁川空港で乗り換えをしました。時間の関係上、ホテルに泊まりました。


そこでも、話しかけていい人というのはお互い阿吽の呼吸でわかるわけですが、向こうから、一緒に飲まないかと来た人がいました。


聞いてみると、フィジー出身で、NATO軍の傭兵として、これからヨーロッパに行くのだそうです。


いろいろ話を伺いましたが、NATO軍の傭兵と話をすることなど、パック旅行でそのような機会が得られることは皆無だと思われます。