平成24年 オリジナル記事
UBQ数理フォーラム代表:長山豊のブログ

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中学受験専門塾に行けば、「いかに中学受験が大学受験に有利か」「いかに中高一貫校が大学受験に有利か」ということを強調される。一部にはまるで中学受験で人生のすべてが決まるかのように保護者をあおる塾もあるようです。


上は、日経流通新聞の記事ですが、首都圏においても、実に、私立中高一貫校の3分の1が定員割れなのです


本当に中高一貫校が大学受験に圧倒的に有利であれば、また、私学ならではの独特の教育方針の魅力があるのなら、3分の1もの学校が定員割れするわけはありませんよね。


尚、定員割れが最近は解消しているという一部報道は、もともと、生徒が集まらないのなら最初から定員を減らした方が良いと、やっと経営者が気がついたからです。


ですから、中学受験は非常に緩和しているのです。特別な難関校・伝統校をのぞけば、全入状態なのです。


何かというと、「加熱する中学受験」とか、「低年齢化する塾通い」が問題になっているとかいう報道があります。


上記記事を見れば、必ずしもそうではないことが御理解いただけるでしょう。

首都圏ですらそうなのですから、交通が不便でかつ、公立高校志向の強い岡山においては、私立中学の募集は大変苦しいものがあり、中には、大幅な定員割れになっている中高一貫校もあると聞いています。


■もう一つの重要な指摘





さまざまな週刊誌あるいは教育関係の出版物において、


「首都圏において私立中学を受験する生徒の割合は何パーセントである。実に、3人に一人が、中学受験する。中学受験に対するニーズが、年々高まっている」


という「報道」がなされております。


そして、その根拠となっているものとして、大手中学受験塾のデータが挙げられています。


さて、文部科学省をはじめとする公的組織が調査するのならともかく、なぜ、一


私企業である学習塾が、中学受験の実際の人数を調べられるのでしょうか


民間企業である塾が、その塾に通っている生徒については、どの中学を受けた、あるいは、いくつ学校を受けた、ということはわかるでしょう


しかし、ある中学受験塾が、


他塾の生徒や塾に通っていない受験生や家庭教師だけで中学受験する生徒も含めて何人、どの学校とどの学校を重複して受験したことを調査することは、常識的に不可能なのではないでしょうか。



現在、塾の実績を稼ぐために、優秀な生徒を連れて、一部の関西の難関受験塾では首都圏の難関中学を受験させたり、あるいは逆に一部の首都圏の難関受験塾が関西の中学受験をさせたりしているところさえもあります。


その際に、受験料を負担はもとより、いわゆる受験ツアーと称して、交通費まで支給するというような話も、事実としてあります。





そうするとどうでしょう。


第一に、どの生徒が何校受けたかという重複受験というのが考慮されているのか。


第二に、首都圏以外から受けている生徒の住所を調べることはほとんど不可能と思われます。どの中学に聞いても、学習塾に受験者の住所まで教えてくれるはずがありません。


第三に、中学受験においては複数回受験というものもあります。たとえば、前期受験とか後期受験とか、**コースとか××コースというのを併願することも可能です。




そこで、その資料のもととなった大手進学塾に直接問合せしました。以下、その内容を列記します。


.首都圏というのは、東京、埼玉、千葉、神奈川のことをいう。


.中学受験率の分母というのは、首都圏の小学校6年生の数(これは客観的にいろいろなデータで調査可能でしょう)である。


.これに対して中学受験者数は、ただ単に、首都圏における各学校が発表している出願者数を単純に合算したものである


以上3.の数値を2.の数値で割った割合が、首都圏における中学受験率である。


との、回答でありました。



ですから、重複受験率や首都圏以外から受験した生徒数とか、当日欠席した生徒数というものは、まったく考慮に入っていないのです。


もし、1人が平均3校を受験すると仮定すれば、実数としての中学受験率は3分の1にまで下がるはずです。

2013-10-26