■(就活とビラ配り)東京に住んでいたフリーター時代、(3畳のアパートに住んでいた:その後TAPに入社した時に、住宅手当でおつりが出る男とよばれた)
ビラ配りのアルバイトをしていた。日払いなので助かる。
当時、「ビラ配りの達人」とまで呼ばれて重宝された。何枚配ったかをチェックされているから、成績が客観的にわかるのである。
ビラ配りで最も重要なことは何か?これも就職試験に出したいほどだ。
それは天気予報を確認しておくこと。雨が降ったら傘をさしている人は手がふさがっているのでまず受け取ってくれない。
その場合、ビラ配りに問題のない場所で、かつ、屋根のあるところを調べておく。
公道と敷地内のぎりぎりのところを探せば、公道で屋根のあるところが見つかる。道路占有許可についても調べておくことも必須である。
ビラ配りの能力の差はどこにでるのか?一枚一枚のビラを配るスピードは変わらないから受け取る率をあげることである。
受け取る側に利益のあるビラなら必ず受け取る。ティシュを付ける必要もない。その見極めがすべてである。
単にビラを配ると何のビラかわからないから、通行人の風体・服装からお互いに利益のある人を判断して声をかける。例えば、会社員風の人が数人で談笑して帰宅しておれば、襟の社章を見ると近くの会社から出てきたばかりの同僚だとわかるから居酒屋のビラは受けとってくれる。駅のオフィス街のある側ではなくて、飲み屋街の側で配れば、さらに受け取り率は上がる。すぐに帰宅する人なら駅にそのまま行く筈である。
子連れのママは居酒屋のビラを受け取ってくれない。
腕時計と靴を見れば、ファションにこだわる人かどうかわかるから、ブティク開店のビラは受け取ってくれる。
政治や宗教のビラと間違えられないように、何のビラか明示することである。お近くの居酒屋の開店ご案内ですとか言って配る。
ビラを配るのが目的ではないから、配った後に気を緩めてはいけない。声をかけてビラを配る際には、受け取った後での声掛けが重要である。受けとっている以上、これから居酒屋を検討している方だから、「有難うございます、この近くのお店です」などと言ってはいけない。近くではなく、ここから3分のお店ですですと具体的に言わなければいけない。
どこですか?と聞かれたから、お店まで10人ほどの方を案内したら、持ち場を離れていたと注意された。
ビラを配るのが目的ですか?ビラを配ってお客様に来店して頂くのが目的ですか?
と言ったら、相当上の方まで、話が伝わったようで、就職希望者が多いことで知られる親会社の大手広告代理店の人事担当者から、一度会いたいとの連絡が来た。
慣れてくると経験的にビラを受け取ってくれる人が分かるようになる。
おかげさまで、今でも空港の待合室で暇つぶしに、人間観察をしていると、どの客がビジネスクラスに乗るかが事前に分かるようになった。
関心のあるお客様にはビラ配りより、お店までご案内する方が重要である。
前から近づいてかつ、絶対に通行人の体に触れないようにしなければならない。
さすがに母校の前で配っていると、元・指導教授が通りがかって、いくら生活に困っているからと言っても。ここではやめてくれないかと言われた.
だが、もっと上がいた。この前、岡山市内で若い女性が、乳児を背中におんぶしてビラを配っていた。計算してやっているのなら「真のビラ配りの達人」である。ただし。目的には反するが・・・
就活セミナーとか海外インターンシップより、ビラ配りを1週間する方がよっぽど就職には有利である。エントリー・シートに特技はビラ配りですと書いて、面接で上の話をすれば注目度抜群である。
■(就活と牛丼)
牛丼が安いのは、人件費が掛からないからであって食材が安いからではない。誰でも出来る簡単な仕事だからだ。と言って誤解してはいけない。
一見、誰でもできる簡単な仕事ほど、能力の差が出るものはない。
浅草の老舗のどぜう料理店に友人と行って玄関で靴を脱いで上がったら、靴をしまってくれた。帰りに、三和土(たたき)のところで靴を出してくれたのだが、一人一人に自分の靴を並べて出してくれた。入った時に、どの靴がどのお客様の靴か確認して、帰りに、お客様に合わせて並べたのである。
ある牛丼店で食後に薬を取り出したら、すぐに水を(*)持ってきた店員がいた。
お茶のお代わりをカウンターの端で混雑時に頼んだら、新しいお茶をもってきて古いお茶を下げた店員がいた。
湯のみを取りに行く→持って帰る→お茶を汲む→お客様のところにもっていく。という手間よりもはるかに効率でかつ、牛丼店のビジネスモデルの本質を理解している。同じ状況でこの牛丼店で、このような対応は他にされたことがないから、この店員の、独自の判断であろう。
学生アルバイトのようだが、私が人事担当者なら最優先で採用する。
コンビニのレジで「カードをお持ちですか?」とか「ポイントカードをお持ちですか?」ときくアルバイトよりは「○○ポイントカードをお持ちですか?」と聞く人は必ず就職がある。
コンビニのレジでおでんを注文して、卵と大根とこんにゃくと・・・と頼んだらだしをまったく入れない店員がいた。レジを打ってからだしを入れないと数えにくいからだ。これは君が考えたのですか?ときくと、そうですとのこと。他のコンビニでだしをたっぷり入れてから、えーっとがんもどき・・・と後何を注文されましたかと聞かれたこともある。お客でも同じだ、EDYでお願いしますと言って出すときに、EDYと書いてある面を出してカード・リーダーに置くようにしている。
常日頃からこういう考えをして行動する。とても生きにくくなりますのでお勧めしません。
スーパーのレジにヘルパーで入った人で「そちらのお客様がお先ですね。どうぞ、こちらのレジにお越しください」と言った感動的な店員がいた。
レジが混雑し始めた時からレジ応援の命令が出ることを予期して、誰が先に並んでいるのか少し前から見ていたのだ。単に「お先にお待ちの方から・・・」という店員はいくらでもいるが、実際に確認してからレジに入る店員は一万人に一人もいないであろう。英検一級を持っている人の数よりは少ないであろう・・・・・
この方は、どんな仕事をさせても頭角を現すであろう。
うどん店に入ると、ある店員はすまなそうに「すいまぁせぇん・・・けどぉ・・カウンターしか空いていないんですけどぉ・・」という。こっちが悪いことをしているようだ。
別の店員はにっこり笑って「お客様!カウンター席が空いております!どうぞ、コチラへ!」という。席があいていて良かった!ラッキー!なにか得をしたような気になる。
さて、この前、至高・最高どんな言葉も惜しくない接客を見させていただいた。
岡山の有名な中華そば・かつ丼等の店である。 このお店は主人が、ここのところ従業員に厳しく接するようになったので最近は、不愉快だとの声がネットで。この前からお手伝いされているようになった方は、息子さんです。
このお店では、休憩時間がないのは商道徳上(死語:教科書販売店でエロ本を売っている。デパートの大売り出しの際に、前の店は貸し切りの宴会をしてはいけない。もっとも、薬剤師のいるドラッグストアでたばこを売っている・・・から、死語・・・)、県外からのお客様に配慮してのことと商店街は運命共同体だから、絶対に店を閉めてはいけないであろうが、そうはいっても、店員も休憩しなければならないわけで、時間帯によってはスタッフの関係で、中華そばだけにメニューを限るときがある。そのことはお店の前に、大きく書いてあるのだが、事情を知らないお客様がかつ丼を注文した。
勿論、物理的に作れないわけではない。
注文を受けたスタッフは「あいにく、今ちょうど、切らしているようですが、作れるかどうかすぐに確認します」といって、店長に確認した。
店長は演技なのかどうかはともかく、冷蔵庫を開けたり、厨房の確認をして「あっ、今日は何とかできます」といった。
それからが凄かった。すぐに店内にいるお客様全員に、「ご希望の方はかつ丼もおつくりできます。いかがなさいますでしょうか」といった。
それから新しく入ってきた客にも、かつ丼もお召し上がりいただけますと言った。特別だとか、今日に限ってとは一切言わなかった。だから特別にかつ丼を作ったことをお客様に全く気付かせていない。客に恥をかかせない。特別扱いに他の客に見せない。
ここまででも、教科書にのせても良いほどのポイントが何十もある。
どうも、就活と言えば資格がどうのこうの、とかTOEICがどうのこうのと思っている学生が多いようであるが。挨拶ができる。気配りができる。靴をそろえる。姿勢よく座る。ゴミを拾う。時間を守る。・・・・・こういった点を企業は見ている。これは色々な知人の人事担当者に聞いても事実である。
日本語で挨拶も出来ない人間が英語がどんなにできても採用されるはずがない。
これを参考に私が作った就職試験
食堂で、「今はかつ丼はできません」と、大きく外に張り出しているのに、お客様がかつ丼を注文した時の対応を述べよ。
(*)なぜある牛丼店ではお茶を出すのに、別の牛丼店では水を出すのか理解できる人は就職力がある。(水を出す店のメニューには緑茶がある。)食兼販売機のあるお店ではなぜ2台置いてあるのか?
■(就活と忘れ物)
祖父(故人)は
「お客様の忘れ物は店の責任だ。商売人たるもの、お店に入った時に傘や帽子を確認して、帰りに忘れていないかどうか確認するのが基本だ」と言い切った。87歳になる母親が一人でやっているお店に、お客様が「さっき、メガネを忘れていないか・・・」と電話がかかってきた。
「いえ、お客様は、いらしゃった時にはメガネをかけていませんでした、店内で、メガネの出し入れはされておりません。お帰りの際にもメガネはかけていらっしゃいません」
さて、この前、あるフランチャイズの食堂を出て、すぐに忘れ物に気がつき、とりに帰ったら、何を忘れたのかも聞かないで、知りません。忙しくてわかりませんと言った。連絡先のメモもとらない。
だから、腹が立ったけど、私も年をとって丸くなったから、文句の一つも言わないですぐ近くの交番に詳細な状況を説明して遺失物届を出した。
警察官は遺失物・・・・のおそれがありますから、すぐに店長を呼びましょうか?といったが固辞した。30分以内に見つかった。
勿論、そのあと丁寧な礼状を本社に出しておいたことは言うまでもない。
