岡山に老舗の中学受験塾があった。中四国に広く校舎を展開していたのだが,どんどん、校舎を撤退して岡山校もいつのまにかなくなった。かろうじて名前だけは残っているが、事実上、大手塾に吸収されたらしい。
この塾がおかしくなったのは外部から経営のプロを入れてからだ。経営者の親戚で,とある銀行の幹部経験者が入ってきてからだ。
なるほど、元銀行幹部職員だけあって、難しい経営理論をよく知っている。各校舎を回って訓示する。限界利益率が。。。とか損益分岐点が。。。とか貸借対照なんとかとか、現在の金利について世界情勢から。。。なんとかマージン比率が。。。云々。さらに,校舎間の送金手続きを、一切、無料にする裏ワザには、流石と思った。
経営指標や数字では塾は語れない。ということが分かっていない。
最初のうちならともかく、いつまでたってもお金の話しかしない。それもそのはずで、この元銀行マンは塾の現場で教えたことがない。
塾の弩素人なのだから、謙虚に現場の声に耳を傾ければよいのに、おまけに同族会社なものだから、周りの講師は平身低頭。
やたら会議ばかりを開いて、議題は資本比率の強化だとか財務体質の改善だとか、経費削減とか内部留保がどうのこうの。
講師はそのうち嫌気がさしてきて塾が黄昏れる一方。
銀行の財務担当の役員をしてたとか威張っても、
生徒の成績が下がったとかで心配で心配で、胃がキリキリ痛くなり、明日が合格発表だから、食事が喉を通らないという時に、職員室に、のこのこ、やって来て、コピーの原価がどうのこうのとか、印刷機との損益分岐点は何枚からでとか、子会社に買い取らせて、そこからリースすれば、節税効果が・・・・とか吹聴している人が上役にいれば、その塾は潰れるに決まっている。
その点、日吉ゼミ予備校(神奈川県港北区日吉本町:現在は閉鎖)の松本一博会長(故人)は偉かった。小さな個人塾からの、たたき上げの人だけあって、どんなに塾が大きくなっても自分で、いくつかの授業を持っていた。
今日は緊急会議があるから全講師召集というので駆け付けると。
「目黒君は、最近、どうも元気がないようだが誰か心あたりはないのか!?担当者は気が付いていないのか!!!。大崎君は、数学が伸び悩んでいるが、担当者はどのような対応をしているのか!?。返事をしろ!!!!。品川さんは早稲田大学まで、あと少しというところだが、なにか良い対策は無いのか?。神田君は推薦入試の評定はみたしているのか、もう一度間違いがないか、計算してみろ。。。。」そのうち、もう理屈ではなくて渋谷先生、上野君を何とか合格させてくれないか・・・
経営が苦しい時も、今になってみればあっただろうに、講師が集まれば、こういう会議ばかり。生徒が合格した時には子供のように喜んでいた。あの笑顔は忘れられない。OB/OGが塾に寄ってくれると、わが子のように、大歓迎して大喜びで、一日中、ご機嫌であった。
トップがこうなら、講師は意気に感じて頑張るし、優秀な講師が集まった。当時の神奈川県の塾では破竹の勢いで伸びていたのも当然であった。
ところが残念ながら今となってはこういう塾は時代遅れになってしまった。経営者の個人的魅力で講師・生徒が集まっていれば、経営者が亡くなってしまえば塾は閉鎖せざるを得ない。
誰でも教えられるようにカリュキュラムやテキストをマニュアル化して、駅前にきれいな校舎を作り、講師の能力と無関係に、生徒が集まるようにした塾が全国制覇している。
その松本先生の教え。
塾は人だ、人だけは妥協するな。
この意味は、どんなに人材が足りなくても無能な講師は採用するな。逆にどんなにお金が苦しくても優秀な講師は採用せよ。
という教えであろう。
さて、UBQを設立した時の話。
きわめて優秀な国語の先生がいるとの話を聞いてスカウトに行った。
国語の特別講習を開催した。
大手予備校を上回る報酬を払っている。三大予備校にもこれだけの逸材はいないのだから当然の礼儀だ。申し込みの前に費用は明示することにしている。講習案内に受講料が書いてある。だからその先生は、受講生の数をみて、質問された。
この人数に受講料を掛けると、私がもらっている報酬の方がはるかに高いんですが、どういうことですか?
私は答えた。
人件費だと思ったら、到底払えませんが、宣伝広告費と思えば安いものです。新聞のチラシに何百万円もかけることを考えたら、安いものです。
その先生が、岡山の教育界でしかるべき地位につかれた時は、保護者の間でUBQは凄いと、随分と話題になったようである。UBQの立ち上げには、うってつけであった。
件の元・銀行マンには考えられないことであろう。
それでも。保護者からは、選択講座の費用が高いとお叱りを頂いた。