ヤクルトや楽天阪神タイガースで活躍された監督の野村氏は理論派として知られる名将だ。
ヤクルトを率いて日本一した後、阪神の監督に就任した。しかし、阪神では結果として実績を残せなかった。
(*以下は新聞や著書で読んだものを記憶に頼って書いている。)
ヤクルトでは成功したのに、何故、阪神ではうまくいかなかったのかという記者の質問に野村氏はこう答えた。
ヤクルトでは徹底的にミーティングをした。ホワイト・ボードに色々な理論や、野球の考え方を書きながら何時間も説明した。
選手にはノートを取らせた。
だが、阪神ではその時の講義の記録が残っているので、それからレジュメを作って配った。だから選手はノートを取らなかった。これが失敗の原因の一つだった。
塾講師の立場からは、まさにわが意を得たりという内容だ。
中2のUBQは中線定理をやっているところだ。中線定理の証明は塾講師30年間のなかで数百回はしている。もちろん、証明自体はいつも同じだ。だから予め紙に書いておいて、毎年それをコピーして配れば講師にとっては楽である。
しかし、それでは生徒に学力がつかない事を経験的に知っているから、絶対にそれはやらない。
ノートは復習のためにとるのではない。ノートをとるという行為が理解の定着を助けるのである。
読書でも大切なことはメモをとりながら読むと良い。頭によく入る。
大谷大学大学院で講義を受けていた時のことだ。パソコンを持ってきてプロジェクターに接続する。講義内容は全て画面に表示され、同時にプリント・アウトしたものが配られる。コレデ、はいおわり・・・
こういう先生がいたが、これでは学生の頭にはサッパリ入らないであろう。
毎年、中一の新入生にいる困ったパターン。ノートばかり一生懸命とり、他人が見たときに分かりやすいようにとるのである。
これは小学生の時に悪い癖をつけさせられたのである。
小学生や中学生低学年では、親が子供のノートを確認する場合が多い。
だから、塾はそれを見越して親が子供のノートを見たときにいかにも良く勉強しているかのように見えるノートを作成するように指導するのである。
たいてい、大手塾にはノートのとらせ方にマニュアルがある。こんな具合だ。
1.必ずタイトルをつける。このとき「入試に良く出る」とか「必ず復習すること!」など赤色で添え書きさせるともっと良い。
2.図はフリーハンドで描かせない。必ず定規やコンパスを使って第三者が見て「芸術的に」きれいな図をかかせる。
3.生徒が問題を間違えた過程を親に見せるようにする。間違えた場合は、正解を赤色で書かせる。
4.授業の要点は文章で書かせるよりは、結果だけを箇条書きにさせる。
5.生徒が解けなかった問題には絶対に空白をつくらせない。後日説明するなどといってスペースを、あけさせるのはもってのほか。生徒がどんなに分からなくても模範解答を書き込ませる。この時「発展問題」と書かせる。
6.継続的な内容にしない。一回の授業で完結するようなノートをとらせる。
7.誤字・脱字は講師がチェックして、消しゴムで消して直させる。
8.難解な内容の時は、板書の量を増やして、ノートのページ数を増やす。