最近は新聞も売れないそうで大衆に迎合するネガティブ・キャンペーンをするものも現れた。

《医師の平均年収はこれこれであり一般サラリーマンの平均年収はしかじかである・・・よって診療報酬を・・云々》といった具合だ。まず、診療報酬は国民が医療全体を担保するためのものであり直接医師の年収を規定するものではない。


1.異なる仕事の平均年収を比較するの愚

職種が違えば責任の重さや勤務時間などは異なる。塾講師のようないい加減な仕事もあれば、人の命を預かる仕事もある。友人の医師が言う。人の命を預かる・・などと簡単に言うが、実際にそのような立場で仕事をした経験のある人が何人いるのか?集中治療室の医師・看護師の仕事がどのようなものか想像がつきますか?その医師は当直のときはトイレに行けないので水分は一滴もとらないともいう。さらに訴訟のリスク等枚挙にいとまない。


職業に貴賎はないというのは収入の違いがあってはならないという意味ではない。このことは、小学校できちんと教えておくべきだ。


2.平均年齢を無視するの愚

サラリーマンの平均年収といえば17歳や18歳、大卒でも23歳の人も入る。しかし17歳や18歳の医師はいない。逆に高名な日野原先生のように100歳を過ぎて矍鑠たる現役医師もいる。統計学的には同年齢の理系で大学院修士課程卒以上と比べるのならまだしも、納得がいく。


3、それまでのキャリアを無視するの愚

塾講師は何の資格も要らないし大学を出ている必要も無い。しかし医師は全員、国家試験に合格している。果たして税理士・公認会計士・弁護士と比べて医師が高収入といえるだろうか?


4、開業医とサラリーマンを比べる愚

いわば、自営業・経営者である開業医はサラリーマンとは全く異なる。私は自営業であるが退職金も無い。ボーナスも無い。有給休暇もない。残業手当も無い。法定休日もない。労災保険もない。失業保険もない。保険も年金も自己責任でまかなっている。サラリーマンと自営業は比較が不能である。


最大の違いは自営業は開業にお金が掛かる点である。有り体に言えば、ラーメン屋で働くには元手が要らないがラーメン屋を始めるのにはお金が掛かるということだ。



 たかがUBQのような零細個人塾経営でも開業するには、事務所を借りて黒板・いす・机を設置し、コピーや参考書・エアコンを揃え、広告の新聞折込チラシをだせば、何百万円も掛かった。かといって必ず成功する見込みがあるわけではない。


 ましてやちょっとしたクリニック(診療所)をでも開設したら億単位の金がかかる。首都圏で医院や歯科医院を始めようと思ったら,土地代だけでも、一億や二億ではすまない。


緊急患者の受け入れ先が足りないからといって民間病院の開設に

国がお金を出してくれるわけがない。この費用は開業医が(例えば銀行から借金して)だしているのである。


マスコミには開業医の平均収入を報道する際には病院ないし診療所の開設にかかった費用と抱えている借金も報道してほしい。


最後に顰蹙を覚悟で・・・


大学の同窓会に行ってきた。詩吟愛好会である。行ってみたらえらそうな人ばかりだ。訊いてみると弁護士や公認会計士・大学教授・会社経営者はごろごろいる。長老のOBには経団連事務総長(当時)をはじめ錚錚たる面々がいる。昔、一緒に馬鹿なことをしていた同級生諸賢と名刺を交換してみたら、大抵の人は日本を代表する会社名の後にそれなりの肩書きがついている。自宅の住所が六本木ヒルズになっている人もいた。


気の置けない同級生に色々聞いてみたら、被雇用者に限っても、メガバンクや一流商社の五十台の役職者ともなれば年収1千数百万円から二千万円を超えているのが当たり前のようだ。医学部もあるから医師もいる。宇宙飛行士の向井さんの上司だった人だ。何時間も旧交を温めてきたのだが、医師が特別に高収入だという『常識』はこの同窓会では通じないようだ。







同窓会の様子:例によって解像度は落としてあります。

UBQ数理フォーラム代表:長山豊のブログ