皆さんは〇んで1時間経っていない友人の亡骸を見たことがありますか?

 

前述したもう1人のヤンキー、皆が一目置く恐れられていた彼を

同い年であったにもかかわらず、「先輩」→「お兄ちゃん」と呼んでいました。

 

公園で友人(女の子です)とボートに乗っていて、

漕ぎ疲れてボーとしている時、学校で一番怖いといわれている女の先輩と

イカツイ顔つきの彼のボートとギリギリのすれ違いをしました。

 

友達も私もボートがぶつからなくてホッとしていたところを彼が見て

ハハッと声をあげて笑うと、女の先輩が私たちを睨んできたため

友だちと抱き合ってビビッてしまったところ、更に彼が大笑いした…

これが初対面でした。

 

という訳で彼のことを先輩だと思っていましたが、

学級委員会で彼が要注意人物である同級生ということを知りました。

とはいえ、1学年400人以上もいれば会うことは稀なのですが、

結構遭遇していました。

彼に関しては喧嘩の話ぐらいで、

いわゆるいじめやカツアゲなどの悪い話は聞こえてきませんでした。

 

進級したところで、同じクラスになったことをきっかけに、

例の公園ボートの話になり、私たちのビビり方が面白かったから

笑えたと。私が学級委員であることから彼に直接話すことが増え、

いつの間にか勝手にお兄ちゃんと呼ぶ仲になっていました。

 

クラスでいじめがあり、私が困っていたところ、

彼がいじめっ子を制圧してくれたおかげで凄く平和のクラスでした。

 

ある夜、私はお腹がすいて気晴らしにと散歩にでかけたところ、

普段行かない私の家から裏手にある公園を通ったところ、

彼がひとりでいたのです。

 

その日は寒い夜でしたが、あまりに薄着だったため、声をかけました。

が、彼はいつもみたいに返事をしてくれることはなく、私に背を向けたため、

話したくない日もあるよなと思いそのまま通り過ぎました。

それから気になって気晴らし散歩の都度その公園を通るたび、

同様の光景を何度か見るようになりました。

 

近くで変質者がでるという話を聞いたときに

先生に彼が夜近所の公園にひとりでいる話をしたところ、

先生は彼の家庭事情を私に話し始めました。

母子家庭で家が貧しく、彼は小さい頃から母親が家で男性に

性的なサービスをする仕事をするその間、外に出されていると

小学校からの引継ぎであったと。

夜、外でうろついていたら喧嘩に絡まれることもあるだろうから、

ひっそり公園にいるんだろうと。それも仕方がないと。

 

今の時代だと個人情報漏洩でご法度という話も

先生は普通にしてしまっていました。

 

夜の散歩の公園で1回だけ彼から私に話しかけてきたことがあります。

「おい!腹減ってねーか?」

「…えっ?」

当時は質問がいきなりすぎて答えに困りそのまま通り過ぎました。

 

卒業してから夜の公園で彼を見なくなりました。

半年たった頃、バイトの給料日に奮発して

近くの飲食店に入ったところ、

彼が店員として働いていたのです。

キッチンは蒸気で暑いらしく汗だくでした。

 

「お兄ちゃん、すげーかっちょええ!」

と、私が言うと嬉しそうにハハッと笑って、

「テイカ、俺、コックになる!店、持ったら連絡すっから!」

「おう!待ってるね!」

「じゃ、仕事中だから」

…これが彼とした最期の会話となってしまいました。

 

3日後、彼が心臓発作で急死したとの電話がありました。

すぐさま彼の家に行くと、ほんの数日前、私にハハッと笑っていた彼が

静かに布団で横たわっていました。

その周りにはまだ医療従事者の方もいらっしゃいました。

彼の母親は私に気付いて叫びました。

「まだあったかいの!ほら、そこの子、触ってみて」

 

今でも意味が分からないのですが、

彼は自宅で倒れ、母親が近所の内科から医者を呼んだそうです。

何故救急車で病院に行かなかったのか

大きな病院へ行くといっぱいお金がかかると母親が言ったそうです。

飛び込まれた病院側も困惑したと思いますが、

死装束さえ纏っていない普通に眠っているような彼の顔を見て、

溢れる涙をぬぐうことも忘れ、ただただ悔しかったです。

 

彼の家と私の家は3分ほどの距離でした。

救える命がすぐ側にあったのに。

違うところで倒れていたら、きっと間違いなく彼を救えたはず。

 

毎年この時期になると何故か彼や早世した友人らを思い出し、

何度も死にかけた私がまだ生き続けている意味を考えてしまいます。