隠しきれない移り香が
いつしか あなたに
染み付いた
誰かに取られるくらいなら
あなたを殺して
いいですか?
いつしか 男が
まとい始めた
ちがう誰かの 移り香
疑いは 恨み へと
そして 恨み は
殺意さえも 孕む。
口を開けば 別れると
刺さったまんまの
割れガラス
男は ズルい。
女の 苦悶を知りつつも
別れの 捨て台詞 で
女の心を 鋭く えぐる。
それに翻弄される 女は
愚か で 悲しい
しかし
男の 本能と ズルさを
かきたてる
女の肉体も 罪深い
いったい どちらが
愚かなのか?
いったい どちらが
罪深いのか?
ふたりでいたって
寒いけど
嘘でも抱かれりゃ
あたたかい。
寒さ が 悲しいから
抱かれるのか?
あたたかさ に
溶け去りたいから
抱かれるのか?
恨んでも 恨んでも
身体 うらはら
あなた
山が燃える・・・
女の瞳で 燃えているのは
何なんだ?
愛憎の交錯 の中で
燃え盛る
狂おしい
情欲の 炎か?
愉悦の 奈落で
迷いや、恨みさえ
燃やし尽くす
肉欲の 炎か?
それとも
多情な男と繋いだ 手の
確かさを 頼りに
迷いの峠を 踏み越えて
ふたりの明日を取り戻そうとする
女の 情念の 炎なのか?
あるいは
そんな苦悶に満ちた
愚かなふたりの
悲しい営み を
超然と 見下ろしながら、
素知らぬ顔で
今、この刹那にも
無心に、しかも 激烈に
赤々と燃え盛る
大自然の 命の 炎か?
苦悶しているのは
そして させているのは
いったい 誰の精神 なんだ ?
本能の 焔に
身を焦がしているのは
いったい
誰の 軀(からだ) なんだ?
そして
燃え上がる 天城の山を
見上げているのは
いったい 誰なんだ?
女の 精神か?
女の 軀か?
男の 背中か?
それとも
女の瞳に映る
天城 自身か?
わからない
僕には
皆目 わからない、
僕が今 対峙している難問は
今の僕の 一切合切凡庸な 知性
では 全く歯が立たない。
今までの経験とか学習とかから獲得された
後天的な 知性や認識形態、判断ではなく
もっと アプリオリな
知性や認識、判断力 が必要な気がする
いったい どうすれば?・・・
そうだ!・・・
天城へ行こう。
狂おしく寝乱れ
湿り気をおびた
苦悶の 隠れ宿 を後にし
揺らぐ 理性の
九十九折〔つづらおり〕
を踏み越え
浄蓮の水飛沫のなかで
身を清め
過去を浄化し
新たな 智 を獲得しよう!
伝説によれば
浄蓮の滝壺には
古くから
愛欲と怨念と我執の色に
毒々しく身を染めた
巨大な 女郎蜘蛛 が巣食うという
だけど
決して
ひるまず、
怖れず
その、忌まわしき情欲の化身など
僕の
鬼滅の刃・・・ならぬ
キツめの八重歯 で
返り討ちにしてやろう!
だから
そうだ!
天城に行こう!
天城の麓で
手招きしながら
誰かが 僕を
呼んでいる。
横尾忠則は
インドに呼ばれ
旅立ったという
インドは
招かれた者のみを
受け入れると言った
僕も
天城に呼ばれ
旅立つのだ
僕を呼ぶ
愛の・・・
天意〔あい〕の
ベックス〔手招き〕を
確かに
感じる・・・
旅立とう!
天城に向けて!!
あの
己の中の
我欲という「鬼」と闘う
禰󠄀豆子 の如き 壮絶な意志 と
祟り神の 怨念を解くために
西へと旅立った
もののけ姫のアシタカ少年のような
知識も、経験も、判断も放棄した
「曇りなき眼〔まなこ〕」を携えて!
なぁーんて
・・・いくぶん
ドラマチックに書きすぎてしまったが、
要は
初夏のあの日、
衝撃の邂逅を果たした
三蔵姐さんの特別の計らいで、
伊豆の山中、
それも あの
石川さゆりファンにはたまらない
「浄蓮の滝」
のほど近くに
人知れずあると言う
秘密の研究所への訪問 が
赦されたのだ。
僕は
ディズニーランドに向かう
女子のように、
いや、
奥の細道に向かう
松尾芭蕉のように
胸を弾ませ
いそいそと
旅支度に取り掛かったのだった。
伊豆には
心の準備もあるので
前日入りすることにした。
今回の旅は
僕自身が進化を果たすための
いわば 巡礼の旅
決して
物見遊山 なんかじゃないんだ!
そう意気込み、
何度も自分に言い聞かせて臨んだ
伊豆への一人旅は
結局、
完璧な 物見遊山 の旅
となった。
小顔効果を狙った
縁広のUV帽子を目深に被り、
るるぶ を小脇にかかえ、
お土産袋を両手にぶら下げた
そんな旅好き女子さえもが
一目置くような
完璧な
ウキウキ物見遊山ツアーとなった。
修善寺駅で
グルメ番組推薦の
「武士(たけし)のあじ寿司」を買い、
意気揚々と
修善寺温泉の温泉宿に
チェックインし
泉質の良い 美人の湯で
たっぷり お肌を潤し
湯から上がれば
シャワーキャップを外し
純白のバスローブに身を包み、
スキンケアをすませ、
眉の上を
指でなぞりながら
す、そ、い、お、ん・・・
と、
今や 意識高い系男子なら
誰もがやってるという
男前になるオマジナイ もすませ、
鏡の前で
うーん🤔マンダム💓
と悦に入り、
すっかりゴキゲンで
宿の川辺のテラスの
デッキチェアに腰掛け、
川のせせらぎを聞きながら
夕暮れの空を眺め
レモンサワーをあおる・・・
ああ!なんて
シュープリーム❣️
我ながら・・・
お笑い芸人の温泉ロケばりの
いい旅 夢気分
だった。
その夜 僕は
川のせせらぎを聞きながら
寝床についた
まどろむ意識は
寝床の温もりのなかに
知らぬ間に 溶けていた。
僕は
いつしか
眠りに落ちていた。
第4章 「 白金の城 」に続く
最後まで読んでいただき ありがとうございます💓




