ここ最近ず~っと寝ていました。そして、目が覚めたらPCでニュースを見てまた寝る、を繰り返していました。そのせいでいつもよりニュースをたくさん見ていました。
おかげで、何だか世の中がとても恐ろしく思えました。あまりにも驚く事件の連続だからです。
それらの事件の中でも、まず身近に感じたのは「PC乗っ取り」でした。毎日使うPCが知らない間に何者かに乗っ取られ、ある日突然警察が来て同行するように言われ、その後は何時間も取調べが続き…。
今回の事件は、一ヶ月ほどで誤認逮捕であったことが分かったからいいようなものの、もし有罪判決を受けてしまったら…そう思うと恐ろしいです。
その事件と前後して、冤罪のニュースがありました。
「東電OL殺人事件」のゴビンダさんです。
1997年3月19日女性の遺体が渋谷のアパートの一室で発見されました。
殺害された女性が有名企業のエリート社員で、その私生活がセンセーショナルだったということ、そして被告人となったゴビンダさんは以前より被害者と知り合いで、不法滞在の出稼ぎ労働者という、被害者と被告人の双方が深く複雑なドラマを生きていた最中での事件でした。当時、その話題性から世間でも注目を浴び、この事件に関する著書が多数出版されました。インパクトのある事件だっただけに、私はこの事件がずっと気になっていました。
今回ゴビンダさんが無罪になって本当に良かったと思います。しかし、同時に日本人として、心底申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。また、彼の日本語による直筆の手紙は心を打ちました。悔しさを滲ませてはいるものの、内面の深さが伝わったからです。そして、彼を信じて待っていたネパールの家族が皆さん素晴らしいと感じました。
ネパールのカトマンズで記者会意見するゴビンダさんとそのお母さん。(AFPBB News)
しかしこの事件は、無罪判決が出るまで、何故こんなに長くかかったのでしょうか?
誰でも、日々の記憶なんて曖昧なものです。突然、「いついつ何をやっていたか言いなさい」、と言われても無理です。まずいと思えばとっさに嘘を言ってしまうこともあるでしょう。また、自分自身の記憶でさえ曖昧なのに、他人様についての記憶となればなおの事、ひとごととなりますから、正確な事は言えなくなります。周りの曖昧な証言を重要視されたら、被告人はたまったものではありません。この事件では、殺害された部屋の鍵の返却時期が争点のひとつであったと言います。そして、証人がウソを言わされた、または証言を改ざんされたのではないかという疑惑もあります。
彼は一貫して無罪を主張し続けていました。彼は、事件発生から3年後の2000年4月、東京地裁の一審で無罪判決が言い渡されました。しかし、その後2000年12月に、東京高裁の2審で無期懲役の逆転有罪となり、上告は2003年に棄却され無期懲役が確定します。
一審の無罪判決を下した裁判官はその後左遷されています。
2007年、弁護団は再審請求しましたが、検察側が証拠品に関し協力的ではなく、すっきりしない態度で時間が過ぎてゆきます。
DNA鑑定の精度は2003年頃、飛躍的に上がり、2006年にはさらに精度が上がったそうです。ではなぜ2007年に再検査請求したにも関わらず遺留品を再検査しなかったのでしょう。
また以前から、ゴビンダさん以外(第三者)の体液が被害者の体内に残されていたことは分かっていたのですが、今回の鑑定で、その第三者の体液と犯行現場に落ちていた体毛、また被害者の爪に残されたDNA型が一致しました。被害者の爪には殺害される最中の抵抗の跡がある可能性が高いわけですが、そんな基本中の基本の鑑定を過去にしていなかったなんて!と驚いてしまいます。さらに、被害者の体内に残っていたその第三者のDNAについて捜査対象外であったというのは驚くほかありません。
このあたりは、「検察による証拠隠し」と言われてしまう原因となっています。
2012年10月29日、無罪判決が出た後、検察側が出したコメントの中に「検察官の証拠隠しはなかった…」の一文があります。
2009年の裁判員制度の導入により、「公判前整理手続き」と言うものが出来ました。これにより、検察側と被告側(または弁護人)が互いに証明予定事実を公判前に開示する事が義務化されたのです。今回の事件については、この制度導入前に起きているため証拠開示の義務は生じません。しかし、このような新しい裁判制度の流れも、今まで出されていなかった証拠の開示につながっているようです。
この事件では、被告人にとって有利な証拠を検察側が出していなかったことは事実です。そして、ゴビンダさんの無罪評決は先延ばしになってしまいました。
DNA鑑定の精度がどんどん上がるにつれ、検察側はゴビンダさんの無実が証明されることを恐れたでしょう。ゴビンダさんの無罪とは検察にとって悪夢であったに違いありません。
しかし、検察側はあくまでも主張します。
「新たな証拠で『(ゴビンダ・プラサド・マイナリさんが)犯人である疑い』が一定水準を下回っただけで、(過去の)有罪判決が根拠とした証拠が否定されたわけではない」と。(産経ニュース2012年11月7日)
その通りです。被告人にとって自分の潔白を晴らすことほど難しいことはありません。
つづく…
参考資料
・産経ニュース
冤罪はなぜ起きたか 警視庁OB「“別人”をつぶす捜査できず」
「この苦しみを終わらせて」 マイナリさんが獄中から支援者に送った手紙の内容は…
・東京新聞
・Wikipedia

