自力ではチケットが取れなかったのですが、お誘い頂いて観に行くことが出来ました♪
初潜入のバウホール(*´ω`*)
座席は前方のセンター席でめちゃくちゃ観やすかったです。
遠い昔、夜叉ケ池という池で干ばつが続いた。村の長者は自らの娘を生贄として池に棲む龍神に捧げ、村には再び雨が降るようになったという。
人々はそれを雨乞いの伝説として語り継いできたが、その後娘がどうなったのかは、誰も知らない・・・。
明治中期――。実業家、島村家の書生の一人である伊予部清彦は、ある夏の夜、島村家の別荘で書生仲間と共に百物語に耽っていた。
怪談話の百話目には幽霊が現れる・・・時を忘れ書生たちが夢中で語り合う中、清彦は「夜叉ヶ池」にまつわる話を聞く。その池には雨乞いの伝説があり、池に近づくと今も池に沈められた娘のすすり泣きが聞こえるというのだ。
しかし幼い頃、祖母の家の近くにあった夜叉ヶ池に出掛けたことのある清彦は、その話を信じようとはしない。仲間たちはそんな清彦に、一晩池で過ごすように提案する。
意を決し、池へと出向くことにした清彦は、島村家の令嬢・百合子に、夏から秋にかけてその辺りに咲く桜蓼(サクラタデ)の花を一輪手折って戻ると約束する・・・。
(プログラムより抜粋)
伊予部清彦 瀬央 ゆりあ
(島村家の書生)
玉姫 有沙 瞳
(龍の宮の姫)
島村政光/銀山 美稀 千種
(実業家で百合子の父/百合子の夫、白川に付き纏う顔役)
龍神(火照 ホデリ)天寿 光希
(龍の宮を治める龍神)
黒山椒道 大輝 真琴
(龍の宮の宰相)
岩鏡 紫月 音寧
(龍の宮の女官長)
木蓮 紫 りら
(龍の宮の陽気な女官)
回想の青年 拓斗 れい
山彦 天華 えま
(清彦の親友)
火遠理 天飛 華音
(龍神の弟)
百合子 水乃 ゆり
(清彦の下宿先の娘)
まずは・・・物語の世界観が美しかった~
背景にある大きな満月と草花が幻想的でプロローグに龍神たちが舞台奥をゆっくりと歩いている演出もすごく綺麗でしたし、日本の伝統的なおとぎ話がベースにあるからか、セリフも古風だけど日本語の響きが綺麗で良いなぁって思いました。
演出家の先生はこの作品がバウデビュー作だったそうですが、素晴らしい作品に仕上がっています
玉姫は昔あったある出来事から人間を恨んでいるのですが、主人公の清彦がどこを取っても好青年で、過去の思いを断ち切りたい玉姫にとってはかなり厄介な相手。
そんな玉姫の様子を窺っている龍神も「玉姫が心変わりしてしまうのではないか」とずっとやきもきしている様子?
今回はとにかく作品の世界観が綺麗ですぐに惹かれたのですが、この世界観に更に説得力を与えたのは紛れもなく今回メインキャストだった瀬央さん、有沙さん、天寿さんの3人でしょうね。
お芝居からそのビジュアルから何もかもが大変見眼麗しいお三方でした(笑)
そうそう、「音楽奇譚」という事で歌も多かったです。
効果音のように響くひっそりとした音楽もあってそちらも小さめのホールには良い感じでしたでも曲はメインで歌う人は限られていて、全く歌わない人も多かったような?綺麗に響き過ぎて初見では耳に残らない曲が多かったかもしれません
この舞台のこの歌!というよりも、上質な物語に沿う上質な音楽という印象。
伊予部清彦役の瀬央ゆりあさん
まず最初に立っているだけで好青年感が出せるのがスゴイ。もはや「好青年」というワードが擬人化したのかと思いました。プロローグで傘から顔をのぞかせた時にすぐに分かりました。この人・・・絶対良い人だわ、と(笑)
いつもお芝居で観るハッキリとしたメイクではなくて、柔らかい印象になっているのもこの清彦という役にピッタリでした。
古風なお顔立ちではないのに袴姿も麗しいです
そしてこの清彦、普通ならもっと勘ぐってしまいそうなところでもただ素直に受け入れて笑って・・・と、本当に嫌らしいところがないので玉姫が所々躊躇してしまうのも納得
『近づけば離れ、離れれば近づく♪』と玉姫と二人歌うシーンはクルクルと感情が揺れ動く様子が風車みたいで、そんなところも昔話っぽいけどとっても切なくて・・・視覚と聴覚両方で物語に入り込めました
涼しげで澄んだ声が魅力の瀬央さんですが、熱の入った演技もとても良かったです。
玉姫役の有沙瞳さん
有沙さんもかなりのハマり役ですね。
物語序盤から怪しげな雰囲気がとっても良いですこういった役を宝塚の娘役さんが演じるイメージがあまりなかったので私には新鮮でした。
復讐したかったはずの人間に惹かれていく後ろめたさと同時に人間と出会えたことをどこか懐かしがっているように見えたシーンが印象に残っています。
夜叉ヶ池の水辺を表現する時に布を使った演出があったんですがそれを玉姫が操っているようで、その中に吸い込まれていく清彦の姿も妖艶に笑う玉姫も綺麗でした。
最後に玉手箱を渡すのは単に自分を忘れて欲しくなかったからなのか、「会いたいなら箱を開けるな」と言って心を繋ぎとめたかったのか。
浦島太郎の原作と言われている“御伽草子”では、太郎は箱を開けた後鶴になってその後同じく亀になった乙姫と再会して幸せに暮らすのだそうですが、この物語も最後にはそんな展開で玉姫が浮かばれると良いなと願ってしまいます。
龍神役の天寿光希さん
どう見ても人間ではない美しいお姿でした・・・
穏やかに笑っているようで全然笑っていない感じが素敵(笑)
二幕で静かに喋る時も、その内面では沸々とした怒りが垣間見えて玉姫への並々ならぬ執念を感じる龍神様
でもずっと玉姫と過ごしてきたのに玉姫の中の「人間が恋しい」という思いには気づけても「寂しい」という心が見えなかったのは龍神が人間ではないからですよね。
ずっと自分なりに大事にしていたはずの相手を振り向かせることが出来ないのに、会ってすぐの清彦が簡単に玉姫の心を汲み取れたことは、すごく悲しかっただろうなぁ・・・とも。
龍神の弟、火遠理(天飛華音さん)はそれを知っていて早くから忠告していたのか、それともただの嫉妬だったのか?も気になりますね
飄々としてずっと能面だったからそういうキャラクターなのかと思いきや、玉姫が亡くなってから急に感情が沸き起こる姿はなかなか不気味でした。火遠理きっと良い奴だとは思うんですが所々に見える闇がやはり兄弟ですね
瀬央さん、有沙さんと同じくらいこちらの兄弟も並んでいてすごく綺麗でした(*´ω`*)
山彦役の天華えまさん
物語の中でよく分からない存在でしたが、この山彦が竜宮城へ行ってしまった祖父?なのでしょうか。
若かりし頃に「行ってはいけない」と言われていた夜叉ヶ池に行って連れ去られてしまい、人間界に戻ってきた頃には当時まだ小さかった息子が成人していて、孫まで出来ていた(=清彦)かなぁ?と思ったのですが、果たして・・・
そうじゃなかったらあれだけ伝説に詳しくて、且つ清彦の為にそばにはいない気がします
同じ書生の仲間達はいくら夏休み中でも年齢を考えると行動が幼過ぎたような?怪談で清彦の袖を持ってビビってる山彦は可愛かったですけどね~(笑)
ただ山彦の事を考えると更に謎だったのは、山彦が逃げる手助けをしてあげた笹丸(澄華あまねさん)の存在。
「本当はこんな所にいちゃいけないんだ!」と清彦のことも助けようとしますが彼はいったい何者だったのでしょうか。
百合子(幸子)役の水乃ゆりさんは可愛らしい役でしたね(*´ω`*)
清彦と百合子さんにもう少し恋仲エピソードが出るかと思ったので突然の2役は驚きました。
“エルベ”から密かに注目していた奏碧タケルさんは、今回はプロローグで幼少期の清彦を演じていました。お芝居ではまだ見つけられないことも多いですが、ダンスではすぐに分かってセンター奥で踊る姿をフィナーレではガン見でした(*´ω`*)
お稽古場映像から気になっていた竜宮城のシーンは、いつも賑やかで色とりどりな衣装が並んでとっても華やか
紫りらさんがひときわイキイキと踊っておられたので自然と視線は上手側に・・・ほっぺと口元の赤い斑点メイクがお稚児さんみたいでめちゃくちゃ可愛かったです
お座敷遊びしてたら怒られて『別の部屋でやろっ♪』って逃げて行ったメンバーは誰だったのでしょう(笑)やめへんのかいっ(* ´艸`)
「おもてなしソング」みたいな感じできゃっきゃと盛り上がる竜宮人は癒しでした。
フィナーレでは一人真っ赤な衣装の瀬央さんがセンターでダンスする姿がすごく近くで見られたし、キレキレに踊る星男達がカッコ良かったです
デュエダンではなんとリフトも!ちょっとヒヤヒヤする怖いリフトでしたが物語と違い二人が笑顔で踊るデュエダンはやっぱり宝塚ならではですね。最後はハッピーエンドで終わりたい私にはとってもありがたいです
でも・・・作品が終わり幕が下りて客席しっとり・・・の直後にあの作品の中で象徴的だった大きな満月+草花を背景に煌びやかな洋装で並んでいる男役の姿がシュールで、
あぁ・・・今すっごく物語に浸っていたんだな私。
と自分で驚きました。
あの綺麗な世界にはバウホールという空間がちょうど良かったのでしょうね。
カーテンコールもあって盛り上がった公演でした。
↑パンフレットは売切れ寸前でしたが、開演前になんとか入手
もうこのパンフレットから既に物語が広がっていて素敵ですよね。文字のチョイスまで良い感じでした。
↑帰りにはかなり出来上がりつつある「新・宝塚ホテル」を見上げながらブロ友様と駅まで向かいました(*´ω`*)