みかん箱の中には夢が詰まっている。
時には選挙演説の演台代わりにもなり、ジャイアンのリサイタルの舞台にもなっているあの頑丈なプラスチックのみかん箱である。
古本屋さんの本棚が一杯で並べられれず、今か今かとその順番を待っている数々の名品が潜んでいるとされるのもみかん箱である。
私は、最近ある隅に置かれた一箱に注目しており、そこで先般もシュミッツの「テルジーの冒険」を発見している。
しかしながらそれで捜索を打ち切ったわけでなく、後日更に捜索を再開してみると…。
古いソノラマ文庫発の何か特殊な香りのする一冊が目についた。
また気になる一冊の発見である。
ロバート・ブロックって…あの「サイコ」の作者だよね、と思いつつ少し頁を捲ってみると、なんと冒頭に私の好きなリチャード・マシスンが吸血鬼について語っているではないか。
しかも、「地球最後の男」とは別の話で!
更には初版本の上、市況は千円以上の値がザラに付いているようで、恐る恐るレジへ持ってゆくと、店員さんも値札が無いのに何かを感じられたのか、価格調査まちになる。
緊張の面持ちで待つも、定価でお譲りいただけるとのことで、蒐集癖としたらこの上ないことであったが、ここに来て少し小銭が足りない恥ずかしい事態となったので、次週まで取り置きで入手したものである。
どうもソノラマ文庫のアンソロジー選の皮切りとなるとなる貴重なものを安価で発見したようで、マシスンにブロックと豪華な作家の一作も所収されているので大満足の一冊である。
こうやってバカをしていられるのも、家族や仕事が頗る順調で、その恩恵を十二分に預かっていることに感謝しないといけないと思っている。