今日は、本業の滲出性中耳炎の話をしてみます。
滲出性中耳炎というのは、鼓膜の中に滲出液が溜まってしまい、聴力が低下する病気です。中耳炎でも痛くはありません。
急性中耳炎を反復してしまい、中耳炎がなかなか完治しないと、滲出性中耳炎になってしまいます。
知らないうちに中耳炎になっていて、子供の聞こえ方が悪くなって初めて気付くこともあります。
これが滲出性中耳炎の鼓膜写真です。
鼓膜の色が茶色に変色し、中の浸出液が透けて見えています。
一部に、空気の泡が見える様子が判ると思います。
こちらが正常の鼓膜です。
鼓膜が透明で、空気が透けて見えます。
滲出性中耳炎は、幼児から老人まで、誰でも発症します。
耳と鼻を繋いでいる「耳管」という機能が悪くなることが原因です。
「耳管」がうまく働かない原因には、蓄膿症、鼻アレルギー、アデノイド肥大、腫瘍などがありますが、ここでは、子供の滲出性中耳炎について書くことにします。
子供の滲出性中耳炎で問題となっているのが、集団保育による耐性菌感染です。
保育園や幼稚園で集団保育されることによって、子供達の間に耐性菌が拡がっています。
日本では、抗生物質の使用量が多いことも一因となっています。
ですから、6歳未満、特に3歳未満の子供たちでは、集団保育を休止することも滲出性中耳炎を治すための解決策の一つです。3最未満では、免疫機能が未熟なため、集団保育で繰り返し風邪をひいてしまうし、耐性菌に感染しやすいので、集団保育を休止すると、滲出性中耳炎にも治りやすくなるわけです。
集団保育を休止しなくても、保育園や幼稚園で園内の消毒を徹底すると、園内の耐性菌流行が減り、子供達の病気を減らすことができます。昨年の新型インフルエンザが流行したとき、全ての保育園や幼稚園が手洗いと消毒を徹底して防疫したので、新型インフルエンザばかりでなく、子供たちの感染症が激減しました。
ぜひ、日頃から、手洗い、消毒、発熱者の隔離を徹底してもらいたいものです。
さて、では滲出性中耳炎の検査を紹介します。
まず、聴力検査。
http://video.nifty.com/cs/catalog/video_metadata/catalog_070815024844_1.htm
次は、ティンパノメトリー検査。
http://video.nifty.com/cs/catalog/video_metadata/catalog_070816025137_1.htm
滲出性中耳炎の治療は、鼻の通りを良くすることが基本です。
ですから、耐性菌に効く抗生物質やアレルギー治療薬を内服します。
アデノイドが大きくて鼻呼吸が出来なくなっている場合には、アデノイド手術をすることもあります。
こういう治療でも上手く治らない場合には、鼓膜切開をして治します。
それでも繰り返す場合には、鼓膜にチューブを入れる治療を行うことになります。
これが、鼓膜換気チューブ挿入術です。
どうぞ、動画でご覧下さい。
http://video.nifty.com/cs/catalog/video_metadata/catalog_070816025151_1.htm
これが一般的な治療方法ですが・・・
耳管の機能を回復させるために、鼻から耳に空気を送り込む方法があります。
耳管通気という治療法ですが、子供に行うことは難しいのが難点です。
これを解決する治療法として、オトヴェントという風船を鼻で膨らます治療法があります。
これが上手く出来れば、鼓膜切開やチューブ挿入をしなくて済むこともあります。
というわけで、オトヴェント療法のやり方です。
専用の風船を使いますから、採用している耳鼻科を探して相談してください。
http://video.nifty.com/cs/catalog/video_metadata/catalog_070816025148_1.htm
こうした滲出性中耳炎になる危険性が高い子供たちは、簡単に見分けることができます。
口をいつも開けている・・・こういうお子さんは要注意です。
鼻で息が出来ないので口を開けていることが多く、蓄膿症、アレルギー、アデノイド肥大等を持っていることが多いからです。
口をいつも開けて、口呼吸していると、歯並びも悪くなります。
上の歯と下の歯が噛み合わさっているから、歯並びが整うからです。
将来、歯科治療費もかさむことになりますから、早目に気付いて治療してあげましょう。
また、鼻が詰まって口呼吸している子供たちは、睡眠時無呼吸を持っていることもあります。
子供が睡眠時無呼吸になっていると、熟睡している時に分泌される成長ホルモンが不眠によって出なくなるので、低成長になります。
保育園に預けて、中耳炎を繰り返し、いつも口を開けて、平均より低成長だったら・・・
睡眠時無呼吸の有無を検査して、アデノイド切除、扁桃腺摘出を行うと、全て解決することもあります。
ぜひ近くの耳鼻科に御相談ください。
如何でしたか?
ここに記述した内容は、私の診療方針です。
それぞれの耳鼻科で治療方針は違いますから、
どの治療が良いか一概には言えませんが、ご参考になれば幸いです。
書き忘れていましたが・・・
私は、正しい情報、正しい知識を、電子ネットワークを介して共有することが大切だと考えています。
ネットワークデモクラシーも、その一環ですし・・・
今回ご紹介した、私が製作した医療情報説明映像も、その一環です。
正しい医療知識が広まれば、医療費の節約にもなります。
そして、患者さんが不必要な医療を強いられたり、効果が期待できない民間療法に騙されたりすることを、減らすことができます。
電子ネットワーク、上手に使いたいですね