学会講演報告です。「成人の発達障害と高次脳機能障害の画像診断による鑑別」リハ学会2016 | 粳間メンタルリハビリテーション研究所/一般社団法人iADLのブログ

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第53回日本リハビリテーション医学会学術集会で演題発表してきたのでダイジェストを報告致します。

まずは趣のある学会中の宿から。





さて、では本題をば。


専門外来のADHD画像データを使った研究結果を発表してきました。

表題:

成人の発達障害と高次脳機能障害の画像診断による鑑別-注意欠如多動性障害例に統計画像解析を用いた検討-
日時:平成28年6月10日(金)

学会:第53回日本リハビリテーション医学会学術集会

会場:国立京都国際会館,グランドプリンスホテル京都


以下、抄録-ダイジェストです(I429, 2-19-2-6)

(医療従事者や研究者向けですので、読み飛ばしOKです。)

【目的】成人の発達障害と高次脳機能障害の鑑別は時に困難である。本研究では注意欠如多動性障害(以下,ADD)と紹介された対象にMRIと統計画像解析を行い、高次脳機能障害との鑑別を行った。
【方法】対象はADDとして当院発達障害専門外来に紹介された患者で、DSM-VのADD診断基準(A-D全て)を満たし、MRI volumetry(MPRAGE)を施行された23例。個々人のMPRAGE結果と、年齢をマッチさせた健常人21例で、統計画像解析(VBM)を行った。
【結果】conventional MRI で明らかな器質病変を認めたのは3例で、脳梁膨大部萎縮、白質のびまん性FLAIR高信号域、側脳室拡大であった。それぞれ、幼児期の脳症、白血病、頭部外傷の既往があった。これら3例を除くADHD20例の統計画像解析で見られた有意な容積減少所見を示した領域で、最も多かった領域は皮質では内側-背外側前頭前野(15例)、白質では脳幹背側部-小脳虫部(16例)であった。
【考察】本研究でADDの症候による診断基準を満たす症例のうち、13.0%にconventional MRIで明らかな後天性脳損傷を認め、それぞれその原疾患が特定された。ここから、症候ではADDと見分けのつかない高次脳機能障害例が一定数存在することが予想された。また、本研究で明らかな器質病変を認めないADHD例においても、75%以上に有意な容積減少所見が示され、その所見は過去のADHD研究ですでに多く報告されているものであった。以上より、これらの特徴を理解した上で、ADDが疑われた例に対しては画像診断を行い、高次脳機能障害と鑑別すべきと思われた。

(医療従事者や研究者向けですので、読み飛ばしOKです。)






以下、

一般のかたにもわかるように、ザックリ解説します。




今回調べたのは、画像診断がされていないADHD(と思われる)人たち23人の脳です。

ADHDの症状は高次脳機能障害や認知症などと見分けがつかないものがあります。

高次脳機能障害や認知症の診断には画像診断が必要なので、画像検査をされずにADHDと診断されている人は、本当は高次脳機能障害・認知症なのかもしれません。


それがどれくらいの割合いるのかを調べてみました。




今回調べた範囲では、ADHDの診断基準を満たす23人中3人で、MRIで脳の別の病気が見つかり、不注意が出現したのも、その別の病気になった後からでした。よって、ADHDではなく高次脳機能障害と診断されました。

症状を見るだけではADHDと見分けがつかないけれど、実際はADHDと診断されてはいけない人が13.6%ほどはいたよと。

そういう結論です。


もうひとつ調べたことは、

普通のMRIでは異常がなかった、ADHDと診断していい人たち20例の脳を解析するとどうなるんだ?

ということですが、

ADHD20例中15例以上に「健常な人と比較して脳が小さいところ」がありました。

(下のスライドに、ADHDの脳異常で代表的とされる部分を示してあります)


この、内側の前頭前野という場所は、大人のADHDにおけるメタ解析でも"健常人より小さい"とわかっている場所です(引用文献サイト)

注意機能に関わる重要な領域です。


このような、

ADHDに典型的な脳異常が、画像解析で見つかる人が75%いたよというのがもう一つの結論です。





以上、講演の報告でした。



注意機能、注意障害の話については、こちらのblogまとめもご参照ください。

http://ameblo.jp/u-mri/entry-12177502633.html



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今後ともよろしくお願い申し上げます。



 

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