「おすすめの漫画は?」と聞かれたら、ついつい答えてしまう作品。それが、この逢坂みえこの「永遠の野原」です。
物語の概要は・・・
二太郎は高校生。作家でデリケートな一姫とともにまるで小姑のように暮らしている。最初は自他ともに認めるシスコン。でも、捨て犬「みかん」をくれた「柳」の出現により、その立場が揺らぎはじめる。学校ではやたらと自分にからんでくる「野沢」の存在が気になりだす二太郎。でも、野沢の本当の思い人は、親友の「太」だった・・・
一姫と二太郎の姉弟の絆、一姫の恋、二太郎の恋と友情、そして姉弟と「みかん」の絆。やがて成長し、変わっていく彼らと、彼らをとりまく人々を、温かい目で見守っていくような、そんな優しい物語です。
まずはこの「みかん」が可愛い!!
犬が飼いたくなります。
いやいや、もちろん、それだけじゃないのよ?
この中の登場人物はみんな「生きている」と思うのです。どの人物もそして、犬の「みかん」も、一生懸命精一杯生きている。
それぞれには皆、悩みもコンプレックスもあって、格好良く生きたくても全然「物語」のようにはうまく行かない。かっこ悪い自分に落ち込んだり、でも誰かが自分を見てくれていることで、案外簡単に元気になってみたり。そんな、誰もが思うようなささいな「感情の揺れ」を、この作者は実に見事に掬いあげていると思うのです。その、ありふれた、でもなかなか人にはうまく伝えられないような悩みや思いにスポットライトをあてて、優しく「それでもいいんだよ」と言ってくれているような。そんなエピソードの数々に、いつのまにか
自分のことが語られているような錯覚すら覚えたり。
たとえば「野沢」。
いつも元気印。「太」くんを一途に思う愛のパワーはピカイチ!そんな彼女ですが、弱気になったとき、ふと考えてしまうのは、
「元気に見える」っていうのは、ちょっぴりソンなことなんじゃないか・・・
人には「世話をする人」「世話をされる人」という2種類がいて、「世話」をする方はいつも「損」なんじゃないか、ということ。
でも、そんな気持ちすらも、好きな人の笑顔ひとつで「これでいいや」と思える彼女だから、心から応援したくなる。そして、自分も「それでいいか」と思ってしまう。
たとえば「二太郎」。
自分にない憧れのものをたくさん持っている「太」との友情。憧れとコンプレックス、「負けたくない」気持ち。「いい奴」で「親友」と言える相手なのに、その気持ちはそう簡単に拭うことはできない。「恋」が絡むとよけいに。
「友達」だから、全てを認めて何もかも受け入れているかというと、そんなことはない。でも、大事な気持ちも、もちろんちゃんとある。そんなうまく言葉では言い表せないような複雑な気持ちも、紙面からこぼれる出来事の積み重ねに共感し、納得してしまっている。
「みかん」と一姫・二太郎との関わりは、そんな人間同士の関係の縮図です。人間が複雑に思い悩む感情を、動物ゆえの素直さで体現してくれるみかんの存在は、しばしば自分たちの気持ちや行動を客観的に見つめるきっかけやヒントをもたらしてくれます。
みかん、ほんっと可愛いよ(°∀°)b
新しい野原を探しに行こう
そして最終話「エイエンノノハラ」。
「ノハラ」は、「野原」であるとともに、「輝かしい幸せな宝物」の象徴として使われています。いろいろなことが変わっていったけれど、みんなで過ごした時間の輝き、それはずっと心の中の宝物としていつでも自分の内にある。かつて「ない」と思った「永遠」の存在を、自分の内側の「ノハラ」に見出すラストシーンには、せつなくも懐かしい気持ちがあふれてきます。
永遠の野原
高校生~大学生~(一姫の)結婚までの、多感な時代のさまざまなエッセンスが詰め込まれたこの物語こそが、私にとって「野原」であるように、いつまでもとっておきたい作品です。