それは平成20年9月21日の夕刻であった。
桜井で雨脚が強くなり、雷雨に追われながら165号線を西峠へ車を走らせていく。
稲光が頻繁に発生し、大粒の雨が降り注ぐ。朝倉では信号機が停電した。
ここまでは強い雷雨と言うくらいで驚かなかった。
しかし、西峠から農免道路を篠楽方面へ走っていると、車の屋根に何かが当たった。
木々が多いので枝が飛ばされたのか、木の実だと最初は思ったのであった。
・・・しかし続く。弾丸のような音が容赦なく車に降り注ぐ。
ヒョウ?
もちろんパンサーではない。(当たり前だ)
雹(ひょう)。天空から数センチ大の氷の塊が無数に落ちてきていたのだ。
昼には暑い日差しで夏のような気温だった。
夕方には激変し、氷が降るまでに・・・。すごい異常気象。
驚愕の世界。この世の終わりかと思えるほど天変地異に感じた車内。
まるで追いかけられて機関銃を撃たれているようだった。その激しい衝撃にフロントガラスが割れないか心配で恐怖した。
非難するにも空を覆うところはない。
洗濯機の中に入ってしまったかのような雨で運転も危険。途中で立ち往生する車やパニックでバックしている車を避け、何とか家まで逃げ走った。
降り注ぐ氷の塊は古いガレージの屋根も貫いていた。
庭一面にこのような氷の塊。氷山に追突したタイタニック号の船上をイメージした。
車であの衝撃なのだから、歩いていたら血まみれになったかもしれない。
バス停の看板は倒れ、立っていたコスモスは無残に横たわってしまう。
家の中は少しの窓から水浸し状態。個人的には大惨事に思え、急いでテレビをチェックしたが警報は出ていない。ニュースにもなっていない。夢でも見ていたのか?
およそ10分程度の雹パニック!
かなり長く感じた。
聞けば宇陀で報告があるが奈良盆地では雹は降らなかったという。榛原が特にひどかったとか・・・。
車の塗装が剥げて凹んでいる車もあったという。
これこそ絶対、「警報」だと思えるのだけれど・・・・。
宇陀で雹・・・神武天皇の話にこういう場面があります。
『イワレヒコ(神武天皇の即位前)とナガスネヒコ(大和の豪族)の戦いは長引き、勝敗はなかなか決まりませんでした。そんな中、にわかに空がかき曇ると、雹(ひょう)が降り出したのです。天から金色のトビが舞い降りてきて、イワレヒコの弓の先にとまりました。トビは光り輝き、まるで雷光のよう。その威容の前に、ナガスネヒコの軍は恐れ惑わされ、力を失ってしまったのです。』
※ちなみに5ミリ以下が霰(あられ)で、それより大きいのが雹(ひょう)と区別されるそうです。