ラブレス
桜木紫乃 新潮社 1,600円
直木賞は、葉室麟さんの「蜩の記」となりましたが、その作品とこの作品が最後の最後の選考で競ったということでした。
丁寧な文章だ。
舞台は、北海道 標茶というところ。
杉山百合江、里実姉妹は、道東の開拓地の炭鉱住宅に住む貧しい一家に生まれた。酒飲みで家族に暴力を振るい借金をつくる最悪の父親とそれを黙認する母親、3人の弟の7人家族であった。不幸な生い立ちは、成長しても本人にもそれぞれの子供である小夜子、理恵・・・そして、綾子にも影を落とす。
百合江は、高校を卒業したらバスガイドになる夢を持っていた。が、中学を卒業後、借金のために父親が勝手に決めた奉公に出され人生を狂わせていく。
一方、妹里実は、生活が苦しいので生まれてすぐ叔母に預けられたが大切に、不自由なくそして厳しく育てられた。ところが、これまた、父親の勝手な考えで不本意ながら貧しい家に戻され憎しみ恨みを抱えて生きていくことになる。
愛情なく家族を振り回す父親に嫌悪感どころか人間の終わりを感じた。母親が子供を連れて逃げたらいいじゃないと人はいうかもしれないが暴力とはここまでくると逃れられないのだ。本当にかわいそう。
百合江は、奉公先から逃げ、故郷を後にした。得意の歌をいかして旅芸人として一条鶴子一座と全国を回る一つの場所のとどまらない生活で身を立てる毎日。そして、一座が解散してからは、女形の宗太郎と二人で流しで暮らし、女の子をもうけた。「綾子」と名付けた。
その日暮らしの足に地がつかない生活をしていた二人に家庭というものを築けるはずもなかった。
一人で綾子を育てる百合江を助けたのは、里実であった。
里実は、理容師となって実家から逃げてその性格通り、キチンと暮らしていた。
里実は、何かと世話を焼き百合江の再婚もやってのける。
不幸は逃れられないのか再婚した相手の借金を返すためにやくざ者の言うとおりに働かされ、2人目の子「理恵」を産む時、子宮も取られ、挙句妄想の姑とマザコンの夫によって大事な綾子をなくしてしまう。
綾子は、何処へ行ったのか、どうされてしまったのか、読み進めていても綾子のことが頭の隅にいつもあった。
里実は、親方の長男と結婚し、幸せであったはずが、夫が愛人に産ませた子供「小夜子」を夫の両親が、引き取り、里実に育てさせるという屈辱を味わう。
二人に安息の時はないのか。
不幸はどこまでもついて回るのか悲しい。
唯一の救いは、綾子が生きていたことだった。
何も知らず、バイオリストの両親のもとで裕福に何不自由なく大事に育てられ、留学もできるほどの教育も受け育った。そして、有名な演歌歌手となった「あや子」。彼女の才能は、間違いなく本当の両親のDNAだ。
願うのは、真実を知らずに「あや子」として人生を全うしてほしいのみ。
読後余韻に浸れるすばらしい作品でした。
「ツリーハウス
」 (角田光代) に何か似ているような気がしました。
直木賞候補作品というニュースをネットで知って読みました。
作品紹介と作者紹介を合わせて見てからだったので作者に先入観がありました。
高卒で結婚後、主婦の傍ら小説を書く・・・みたいな作者紹介。
不自由ない主婦生活で暇だから趣味程度で書いた小説が当たったんでは?女性ならではの意地悪な嫉妬が入る。
題名も何か軽いものを連想させるし。
初めて読むものは、作品紹介は作品を手に取る上で必要だけど、余計な情報は、読後に知ったほうが良いと痛感しました。
残念なのは、タイトルもそうだけど、一番いけないのが、本の装丁ではないだろうか。
何でこんなデザインにしてしまったのか
題名と内容とかけ離れたものだし、本の表紙も内容を表すのかギモン。この表紙からだとイマドキの若い女の子が書いた軽い内容の恋愛ものかと思ってしまう。
内容が良いだけにここだけ残念である。