北朝鮮軍の新型戦車
昨日、朝鮮労働党創立75周年祝賀パレードにて新型戦車が披露された。
ぱっと見はアメリカのM1エイブラムスである。
しかも先導する装甲車は陸上自衛隊の軽装甲機動車にうり二つ。
さらに近づくと
ツッコミどころ満載のディーティールだった。
【武装】
①主砲
115mm滑腔砲と判断する。乗員配置が装填手ありと思われるからである。
砲身には耐熱被筒(サーマルスリーブ)無いことがわかる。
砲口先端の出っ張りはMSR(砲口照合装置)であろうが、排煙器(砲身中央部の太いところ)上部後方に丸いレンズ的な物が確認できる。受侵器なのかとも考えたが、位置的に無理であろう。防楯上部の箱状のものが送受信器であろう。
ちなみに過去の北朝鮮軍戦車ではレーザ測遠機が付いていた場所だ。
②同軸機銃
同軸機銃の開口部と判断するが、開口部が大きいので7.62mm機関銃かどうかは分からないが、北朝鮮スタンダードとも言えるので無難に機関銃だろう。
③対戦車ミサイル(双連)
M2ブラッドレー戦闘車と同じように発射時には斜め上にせり上がる構造の様だ。
④擲弾銃
以前は双連だったが、単装にしている。
銃塔と一緒に旋回するタイプの様であり、弾薬箱が射手の防護装甲なのだろうか。
2018年の祝賀パレードにおける新戦車(先軍-915)
砲塔上は双連的弾銃、双連対空ミサイル、双連対戦車ミサイルとてんこ盛りだ。
このお祭り状態から真っ当な状態?になったともいえる。
【防護装備】
①車体前面装甲
複合装甲風だが、車体前面下部は単一装甲であろう。
上面にはブロック状(格子状)の模様が確認できるのでERA(爆発反応装甲)だ。
操縦手ハッチがペラペラなのは秘密だ。
牽引フックが華奢なのが気になる。
②砲塔前面装甲
M1エイブラムスに似せた外観だが、よくみると薄板なのが分かる。
好意的に言えば「10式戦車やT-14アルマータ戦車と同様の保護カバー」といえるが、取り外しができないようであるし、防楯と砲身の関係性から大した装甲があるようには思えない。
③スラットアーマー
車体部はサイドスカートと共にT-14アルマータ戦車を模倣したデザインである。
砲塔部は中国軍99式戦車の物に酷似しているが、間隔が狭すぎてスラットアーマーとしては機能しない。
④砲塔上面装甲
一応、ERAを装着しているように見える。
⑤APS(アクティブ防御装置)
砲塔正面左右と砲塔横左右に3本ずつ4基計12本の擲弾発射筒がある。
発射筒の上部の四角い箱が検知用ミリ波レーダであろう。
⑥発射発煙装置
砲塔横後部左右に4本づつ2基計8本確認できる。
砲塔上部左右の塔のようなものがレーザ検知器と判断する。
そのまま撃ったらスラットアーマーにぶつかるように見えるのは目の錯覚だろう。
APSの取付方法で装甲の薄さが分かる。
また、発煙発射筒が撃ったら大変!・・・目の錯覚だ
サイドスカートはT-14アルマータを彷彿させるが、リベット止めに見えるこの装甲は何なんだろうと疑問。なんちゃってERA臭がプンプンする。
スラットアーマーの間隔が車体と砲塔では全く異なることが良く分かる。
ちなみに、陸自の使用する110mm携帯対戦車弾(パンツァーファウスト3)をスラットアーマーで防ぐことはできない。
【照準装置】
①車長用照準装置(パノラマサイト)
左右に開く扉が確認できる。
細い方が昼間光学系、広い方が暗視光学系(熱線映像装置?)
②砲手用照準装置
片開きの一枚扉である。
暗視(サーマルサイト)のみなのかどうかは不明だが車長用よりも明らかに小さい。
上記照準装置の配置から、砲塔乗員は車長、砲手、装填手の3名で、自動装填装置はなし、結果115mm滑腔砲を使用せざるを得ないのではないかと愚考する。
照準装置とは関係ないが、砲塔上面の溶接痕や接続痕が見事に消されている。
フランス軍ルクレール戦車に倣って樹脂コーティングしたのだろうか?
【その他】
最大の疑問は「ベース車はなにか?ということだ。
最新型だった先軍-915に転輪数を除けば車体は酷似している。
片側6脚だったのが1脚増えて7脚になっているのだ。
また、履帯もシングルピンがダブルピンの履帯に換装されている。
ガンマ補正したら脱出ハッチが見えるかと思ったのだが確認できない。
しかし、車体下部の構造はロシア戦車の血統であることが確認できるとともに、サスペンションはトーションバーだと判断できる。
【結言】
一応、ざっとした分析をしてみた。
個人的にはT-62戦車ベースの魔改造戦車なのかなと考える。
よく言えば西側戦車の技術を取り入れた戦車言えるが、単なる各国戦車の模倣張りぼて戦車である可能性が高いと推察する。
先軍‐915戦車のディティールと比較した場合、新戦車は余りにも雑なディティールと言わざるを得ないのだ。
以上、元戦車乗員だった爺の独り言