
105TKG 75式105mm粘着りゅう弾1型
【修正増補改訂】
2021.4.24
75式105mm粘着榴弾1型の詳細についてご質問があったので知り得る範囲で紹介
過去記事(2010年1月27日)の記事
英国が実用化し、High Explosive Squash Headを略しHESH(ヘッシュ)と呼ぶ。
直訳すると「頭潰れ高性能爆薬(弾)」となる。
APDS同様に名は体を表すというか、イギリスジョークなのかは定かではない。
第1戦車大隊の正面玄関に展示されている弾丸効力の標的
装甲板表面の弾着痕だ。厚さは50mm程度であり普通鋼板(軟鋼板)なので着弾及び爆破衝撃で結構へこんだ上に穴が開いてしまっている。
同標的の裏面。直径30cmぐらいの範囲が衝撃波で剥がれてしまっている。
これがホプキンソン効果(Hopkinson effect)であり、離剥装甲片が乗員及び内部機器に損害を与える。
HESHは、1940年代に英国の技術者チャールズ・デニスタウン・バーニー卿(Sir Charles Dennistoun Burney)によって開発された。元々は、コンクリートで強化された要塞壁破壊のため)の「ウォールバスター」弾薬として開発され、戦車用としてはチャーチルVII戦車AVRE(装甲工兵車)の165mmL9破砕砲(165mm L9 Demolition Gun)用の弾で採用されている。
米国で簡略化し採用したものがHigh Explosive Plasticを略した(HEP:ヘップ)という名称になる。
Plasticは炸薬に可塑性爆薬であるプラスチック爆薬を使用しているところから命名されたものだ。
High Explosive(HE)は高性能爆薬を意味するが、砲弾名称としては“榴弾(りゅうだん)”と訳される。
Squash Headを直訳すると「圧され潰れる頭部」ということになり物騒だ。そこで装甲板に張り付くような様相から、和名は“粘着榴弾”である。
通称はHEP(ヘップ)であるが射撃号令では「ねんちゃく」と呼称する。
陸上自衛隊では106mm無反動弾薬及び105mm戦車砲弾薬として採用していた。
106mm無反動砲用は“68式106mmRR、粘着榴弾”、105mm戦車砲用は“75式105mmTKG、粘着榴弾”がある。
双方とも弾径は105mmで構成は概ね同じだが、戦車砲用は発射衝力に耐えられるように鋼製の弾殻(弾体)が厚くなっていると共に弾底が強化されており、弾頭重量が2kg程重くなっている。
106mm無反動砲用弾頭の方が弾殻が薄く、炸薬量が多いのが分かる。
戦車砲用には1型と2型の2種類がある。
薬莢部の構成が異なり、1型は薬莢の4分の3ほどに焼尽薬莢を採用している。このため、完成弾(弾頭部と薬莢部を組み立てた状態)の重量は2型の20.1kgに対し、1型は17.8kgと2kg以上、軽量化されている。
下の画像は2型の弾頭だが、1型も全く同じものだ。
黄色の標記は炸薬等の火薬入りを示す
下部の黒い部分は薬莢から切り離した際の鋭利な切断面があるので危害予防のための黒ガムテープが巻いてある。
過去に私の作ったCGは120mm滑腔砲弾薬と同様に軽量化のための焼尽薬莢使用だろうから、金属部分は黄銅(真鍮)よりも軽量な鋼製であろうとの推測で作成したものだ。
ところが参考資料とした制式要綱(C2539)にちゃんと書いてあった。
「薬きょうは、黄銅性の底部と焼じん性のきょう体からなり」
ううむ・・・・
また付図4には
「きょう体には,合成樹脂系耐湿性塗料が塗布してある」
つまり過去に
「実物見たことないので薬莢部分の色は推定」
「ひょっとしたら、焼尽薬莢部は無塗装だったかも」
なんて書いていたのだが、金属部は黄銅(真鍮)製で焼尽薬莢部には塗装がされていると明記してあったのだ。
若さゆえの過ちと思われる。
しかし、焼尽薬莢部が何色なのか記述がない。
唯一参考になるものは、ウィキペディアの「粘着榴弾」に掲載の画像だ
画像は粘着榴弾形状の特填弾であり、試験用の弾薬だ。
砲の性能確認で使用されるものであり、無炸薬である。
薬莢底部は見事な黄銅色だが、焼尽薬莢(きょう体)の色は?
銀色?金(黄銅)色?
画像を見る限り、銀色で塗装された塗料が剥がれ焼尽薬莢の地色(段ボールのような色)が見えてると推測するが、金色(黄銅色)も否定できない。
さて、軽量な1型が採用されなかったのはどのような理由だろうか?明確な答えはない。(知らない)
①焼尽部と金属部および弾頭との接合が弱く破損しやすい
②高価な黄銅は一部だが、複雑なので工作費が高い
③2型の撃ち殻薬莢は空包用として再利用できる
と、以上のような理由で2型に軍配が上がり採用されなかったと愚考する。