戦車のサスペンション(その12)ホルストマン式サスペンション
■ホルストマン式サスペンション
suspension type HORSTMANN
さて、先回「種類」として紹介した記述について詳細を説明しよう。
記載例①で下記に示した3つの記述だ
・ Horstmann Type (ホルストマン式)
・ Christie Type (クリスティー式)
・ "Slow Motion" Type (スローモーション式)
これらは代表的なイギリス戦車のサスペンションタイプとして記述される。
分類としては「人名若しくは会社名」となるのだ。
「ホルストマン(Horstmann)」は開発者名であり、会社名でもある。
厳密には「Horstmann」が人名で「Horstman」が会社名だ。
カタカナで書くとどちらも一緒だからどーでもよい。
「ホーストマン」表記もあるし、発音的には「ハーストメン」となろうが、戦車関連では一般的な「ホルストマン」として表記する。
このホルストマンはイギリスの技術者だ。本名を「Sidney Adolph Horstmann:シドニー・アドルフ・ホルストマン」という。父親はドイツの時計職人だった。
ホルストマンはは1913年に自動車会社「Horstman Cars」を設立した。現在ではHorstman Defense Systems(ホルストマン防衛装備)として存在する。
戦後イギリス第2世代主力戦車チーフテンが有名であるため、広義ではチーフテンが採用しているような水平コイルスプリング2輪ボギータイプをホルストマンサスペンションと呼ぶが、チャレンジャー戦車に採用されたサスペンションは独立懸架式の油気圧懸架方式であり製品名を「Hydrogas®:ハイドロガス」という。
自衛隊でも16式機動戦闘車がホルストマン社の油気圧懸架装置を採用している。製品名は「Hydrostrut®:ハイドロストラット」だ。
一般的に「ホルストマン・サスペンション」と呼ばれる懸架方式は、懸架台(suspension or bogie bracket)に独立した2つのスイングアームに水平コイルスプリングを使用する2輪ボギー構造である。
基本的なホルストマンタイプ
実装例①
ホルストマン・コイルスプリング・サスペンション、ツーペアタイプ
フランスのルノーR35戦車のボックスボギー
構造はアームが同軸にないだけでホルストマンと同じである。
バネがゴムばねと言う違いだけ
実装例②
ホルストマン・コイルスプリング・サスペンション、フォーペアタイプ
ビッカースMk.IV軽戦車やブレンガンキャリアでお馴染みのサスペンション
ツーペアタイプの改良版で、バネを左右に配し斜めに配置した。
センチュリオン戦車への装着例
水平コイルスプリング方式に戻った
前後のボギーにはショックアブソーバーが付いている。
ショックアブソーバーなしのボギー
ホイールが無い状態なので構造が分かる。