2016防衛技術シンポジウム(機動戦闘車)
機動戦闘車の概要
■ 開発の目的
戦闘部隊に装備し、多様な事態への対処において、空輸性、路上機動性能に優れた機動力をもって迅速に展開するとともに、中距離域での直接照準射撃により軽戦車等を含む敵装甲戦闘車両及び人員を撃破するために使用する。
【解説】
装備先の「戦闘部隊」とは「機甲科(戦車・偵察)」及び「普通科」と説明していたが、基本的には今後、普通科連隊基幹で新編成される「即応機動連隊」に配備される予定である。
機動戦闘車が配備される部隊名称は「捜索大隊(そうさくだいたい)」という噂もあるが、現状では何とも言い難い。
また、一部の偵察隊にも装備されるのではないかという話である。
とりあえず教育用としては戦車教導隊、一線部隊用は第8師団と第14旅団に配備されるという。
戦車教導隊への装備は74式戦車装備の第1中隊あたりであろうか?
第8師団への装備は第8戦車大隊あたりが濃厚の様であるが、同駐屯地(玖珠)の第4戦車大隊あたりにも装備されるかもしれない。
この装備先はあくまで一時的な処置であり、今後の第4及び第8戦車大隊の廃止にともなう西方戦車隊及び即応機動連隊隷下の機動戦闘車部隊の新設のための準備となるのだろう。
第14旅団への装備部隊先ははっきりしない。
■ 車両の概要
機動戦闘車の概要(試作車両4両製造)
・大口径砲の低反動化技術
・装輪車両に適合した射撃統制機能の最適化技術
・高剛性・耐弾性を確保した小型・軽量車両技術
・車両の安定化技術
【解説】
試作車は4両
(仮称)試作5号車は「実用試験車両」
[大口径砲の低反動化技術]
砲口制退器(マズルブレーキ)及び長後座長(ロングリコイル)による発射反動の低減
[装輪車両に適合した射撃統制機能の最適化技術]
シミュレーション及び実射による最適な射撃諸元の実装
[高剛性・耐弾性を確保した小型・軽量車両技術]
これはよく分からない。
小型でも軽量でも無いと思うのだが、恐らく
「装甲が薄くても十分な耐弾力と剛性があるよ。」
「装甲が薄いから同様の大きさの車両よりも軽いよ」
「装甲が薄いからその分寸法が小さくできるよ(苦しい)」
という事だろうか?
[車両の安定化技術]
走行時の乗り心地と射撃時の剛性という反する要求を満たす懸架装置の開発
クッション装置に10式戦車と同様の「油気圧ユニット」を採用
機動戦闘車の特徴(火力・機動力)
火力に関する特徴
砲口制退器と後座長により後座効力を低減
【顔説】
砲口制退器は多孔式(たこうしき)を採用
後座長を長くすることにより反動を軽減(10式戦車と同様)
砲口制退器+長後座長で40~50tと言われる105㎜戦車砲の反動を127kN(約12.7t)に低減
火力及び機動力に関する特徴
バネに空気(多分窒素)バネを使用し、オイルの流れを適切に制御
10式戦車と同様のパッシブサスペンションである。
セミアクティブサスペンションぐらいは装備しているのかと思ったら「パッシブ」という説明だった。
なお、オーラルセッションで驚いたことがある。
油気圧サスペンションを採用した理由が説明された。
1)重量は従来サスに比べ軽い
2)衝撃は従来サスの2/3
3)コストは従来サスとほぼ変わらない
ということだった。
油気圧サスペンションがお高かったのは既に過去の話の様である。
機動力に関する特徴
4サイクル4気筒ディーゼルエンジンを採用
出力は570馬力
ぶっちゃけた話、10式戦車のV型8気筒エンジンの片バンク4気筒を使用した直列4気筒エンジンである。
図を見ると黄色く見えるところが排気ターボ過給機、濃いブルーが吸気系と見受けられるので小さい四角の部分がインタークーラ、薄いブルー系が冷却液系なので大きな四角がラジエータであろう。
説明者さんに「10式戦車のエンジンの片バンクなんですか?」
と質問したら「私は本来の担当じゃないので分かりません。すいません」
と言われて残念だったが、オーラルセッションで10式戦車と同じエンジン(気筒を減らした)とあっさり言ったのにはちょっと驚いた。
トランスミッションのメーカーが分からないのだけどもトルコンATならアリソンなんだろうな。
個人的にはデュアルクラッチの機械式ATを積んでいてほしい。
600馬力級対応品があるのかどうかは知らんがちょっと調べてみよう。