なんで戦車が出る必要があるんだ? | 軍曹!時間だ!…

なんで戦車が出る必要があるんだ?

最初に、被災され亡くなられた方々のご冥福を祈ると共に、災害に見舞われた方々、災害復旧に尽力されている方々の無事を祈ります。


自分、在職中は災害が発生すれば

「軍曹!【原子力災害対処要員】の名簿に名前入れとくね」

と、よく言われたものである。


東海臨界事故以降、原子力災害に際し少しでも活躍できるようにと教育を受けたんだな。
なにせ、師団の化学防護小隊だけでは圧倒的に人数が足りないから隷下の各部隊に対処可能要員を養成したわけだ。
「機甲科なんだから、その時は戦車でヨロシクね」とも言われた。
・・・個人的に戦車持ってるわけじゃないので無理です。


在職してたら今頃被爆三昧である。だからといって「良かった」と思ってるわけではなく、「燃料棒の様子見に行け!」と命令されれば行ってるな。

もっとも、そんな命令出す者がいるわけ無いから、「自分、ちょっくら見てきます」といってる可能性もある。

放射線レベルの脅威によるけど。


さて、なんで今回戦車が出ることになったのだろう?


軍曹!時間だ!…-74tkdoza

簡単に言えば厚い鉄板(鋼板)を組み合わせて作られた車両だから。


放射線の特性を簡単に説明した東電のホームページの説明によりますと
http://www.tepco.co.jp/nuclear/hige/qa/thi/aqa/qa-a4-j.html
(東電のサイトだから信用置けないかも知れないけど、一番分かりやすい図だと思う)
現在最も防御する必要があるγ(ガンマ)線の防御に必要な素材は「厚い鉛や鉄板」なのである。


つまり、元来、「戦車の構造自体が対放射線防御機能を持つ」に過ぎない。


また、放射能汚染地域での行動を可能にしているNBC防御装置を持ってることも大きい。
もっとも、NBC防御といっても被爆量が減るだけで被爆しないわけではない。


他にも、暗視装置を使用できるので夜間作業も可能な点が挙げられ、装甲及びNBC防御装置とあいまって長時間の作業が可能だと見積もられたのだろう。


さて、鋼板による放射線の遮蔽能力だが、電磁波であるγ線は原子番号が高く比重の高い素材であればあるほど通過しにくくなる。

遮蔽するためには鉛で10cm以上の厚みが必要とされる。
鉛が比重11.3、原子番号82、鋼板(鉄・ニッケル・クロム合金)の比重が約7.9、原子番号が24~28(主の鉄が26)と言うことを考えると鋼板が鉛と同程度の遮蔽を可能な厚みは比重比で約1.5倍、原子番号比で約3倍の厚さを必要とする。

つまり、単純に鋼板換算すると比重比でだと15cm以上、原子番号比で30cm以上あれば十分なのかな?
正面防御だけ考えれば74式戦車だと半減、90式戦車だと遮蔽可能レベルなのだろう。
正面以外は74式も90式もさほど差はない。遮蔽能力?へへ、秘密だけど、化学防護車よりも高い。


本来なら90式戦車のドーザ装着車の出番となるのだろうが何故90式戦車は出ないのだろう?
車長の視界、運転のしやすさ、暗視装置の機材等、放射能防御性どれをとっても最適なのだが。


一つは被輸送性。
現行道交法だと輸送トレーラ込みで約70tの重量だと難しい。
しかし74式戦車だと輸送トレーラ込みで約50tだから、90式戦車だと自走すればOKだと思うのだが。


一つは汚染後の処置
作業を行なう以上、車体の放射能汚染は避けられない。
90式戦車は74式戦車と違い放射能汚染地域での戦闘も考慮して設計されているため室内汚染される可能性が高い。
汚染された場合、除染が難しく場合によっては破棄しなくてはならない。

74式戦車の場合は、すでに退役が始まっている車両であることも考えられる。


とりあえず、2つ考えられたんだけど、どうやら今回の戦車出動は自衛隊側の独断によるものらしい。


どうりで、近場の戦車部隊ではなくて第1戦車大隊から出動するわけだ。

第1戦車大隊は90式戦車装備してないから出したくても出せないし、装備していても90式戦車丸ごと輸送や自走は出来るはずも無いな。

また、戦車に比し装甲防御が低いからという可能性もあるが、施設科装備である「75式装甲ドーザ」や、敵弾下で作業を行なう「施設作業車」は指揮系統上の都合で出せなかった事も考えられる。


ともかく、劣悪な環境化で作業を行なう東電、消防、自衛隊の各作業員の皆様には無理をせず、冷静に淡々と行動し無事に帰還していただきたいものである。


現職であったら自分もあの場所に居たはずだから、なおのこと願う。