"Mas que nad"

『その写真の女性を探すの❓️』

小野ユキは蔵人に質問した。


『そうですね。銀色の巨人の夢を見て、起きたらその写真が置かれていた。写真の女性を探す旅に出て、旅の先々で出会った人たちとの交流によって少しずつ成長し、一つずつ謎が解け、遂に巡り会うことができました……………みたいな陳腐なロード・ムービー・ストーリーにはしたくないんですが、このままではそうなってしまいそうですね』


『あんた、そういう理由でオファー断わってたのね。だったら監督になって好きな様に撮ってみなさいよ。私が脚本書いてあげる。まずは7つのコマの意味を決めましょう。』



『それは頼もしい』



『面白そう。私も参加していいですか❓️』

洋美の瞳はキラキラしていた。



『もちろん、遠慮なくどうぞ。』



『では遠慮なく。ラストシーンはどんな感じですか❓️その女性と結ばれるんでしょうか❓️』



『えっ、いきなりラストシーン❓️』



『観る側としてはネタバレは御免ですが、創る側なら最初に決めておかないといけないような気がします。』



『なるほど創る側の視点か…アレ❓️ちょっと待って、創ってる間に時間はどんどん過ぎて行ってしまうんじゃ、あ〜りませんか❓️映画って企画から上映まで何年もかかって上映時間は長くてもせいぜい3時間程度。そこのところを現実に置き換えるとどうなんだろう❓️時間を止められない限り不可能じゃないか❓️それに現実を自分で勝手に創ってもいいんだろうか❓️』

蔵人はせっかく盛り上がってきた場の雰囲気に自ら水を差した。



『ごめんね、フィルムのコマに例えたのが悪かったみたいね。映画の世界はクロちゃんには臨場感が高過ぎてかえって現状から抜け出せなくしちゃったわね。』



『蔵人さん、深呼吸してみましょう。』

小野ユキに続きを志乃が引き受けた。


『いきますよー、吸ってー…………吐いて………吸ってー………吐いてー………吸ってー………』

志乃の指示に素直に従って蔵人は深呼吸した。


『蔵人さん、今の深呼吸は誰の意思でしましたか❓️』


『志乃さんです』


『本当にそうですか❓️』


『❓️』


『深呼吸しないことは出来ませんでしたか❓️』


『出来ました』


『深呼吸することを選んだのは誰ですか❓️』


『僕です』


『そうです。蔵人さんの意思で選びましたね。ではなぜ深呼吸をすることを選んだのですか❓️』


『特に理由は有りませんが、敢えて言うと志乃さんの指示に従って、不利益を被ることはないと思ったからかな。』


『そういう風に蔵人さんご自身で判断してご自身で選んだはずですよね。それはご自分で現実を創っていることにはなりませんか❓️』


『確かに、創っていますね。』


『時間も同じように止めることが出来ないと選択しているのではありませんか❓️』


『他に選択肢はないと思っていますが、あるんですか❓️』


『可能性が0でない限り選択肢に入れても良いと思いませんか❓️』


蔵人は小野ユキの顔を見て

『なるほどそうか、可能性が無いことは無い、選択肢に入れて選択します』

やはり志乃さん只者ではないなと思った。


『無いことを証明するのは難しいですからね。次はお嬢様のカクテル創りましょうね』

志乃は笑顔を若々しく輝かせながら、カクテルを創り始めた。洋美も同じ笑顔で頷いた。


ライムグリーンのグラスを5つ取り出し、氷を一粒ずつ丁寧に落とす。氷がグラスに触れるたび、微かな音が空気を震わせ、場の空気が少しずつ澄んでいく。


『なぜグラスが5つなんです❓️』

蔵人が尋ねた。


『そろそろお見えになる頃ですので』

志乃はミントの葉を指先で軽く撫で、香りを立たせながら輝きを増した笑顔で答えた。


ラムを注ぐ手は、まるで記憶をなぞるようにゆっくりと、しかし迷いなく。パッションフルーツのジュースが加わると、グラスの中に南米の夕暮れが広がった。


最後に、ほんの一滴のグレナデンを落とした。赤い雫が沈みながら、グラスの底に小さな太陽を描く。


『マシュ・ケ・ナダでございます。』


               つづく


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