はじめに
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設計図面は、エンジニアが自分の考えを他のエンジニアに伝える最も重要なコミュニケーション手段です。例えば、国際化が進む工業製品は、自分の設計した商品が多くの国々の工場で現地生産される場合もあり、設計者がその現地工場一箇所ごとに訪れて作業員へ指示することは困難です。したがって、設計者には現地の作業員が設計図面を観ただけで間違いなく図面通りの部品を製造出来る見やすく・勘違いしない設計図面を描くことが求められます。
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設計現場では3次元CAD(Computer Aided Design)を用いたデジタル化が進んでいますが、CADはあくまでも支援ツールであり、現場のエンジニアが見やすく・勘違いしない図面を描くためには、単にCADが自動挿入するままに図面記載するのではなく、現場での作業員の製造手順をイメージして、品物の形状表記や寸法の記入箇所に至るまで設計者が気配りをする必要があります。
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世界で通用する図面を描く基本として、規格に則った描き方が重要であり、設計製図の講義では、まずJIS(日本産業規格)に基づいてルールを覚えていくことが多いです。もちろん規格に則った描き方を覚える事は必要ですが、一方で、規格全体を網羅的かつ系統的に取り扱うため、特徴的な事例紹介にとどまり、具体的な品物に対して前述した見やすさ・勘違いを起こさせない配慮を失敗例などを用いて掘り下げた解説したものは少ないです。
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このブログ連載では構成部品が比較的少ないですが、ねじによる可動機構や切削加工や鋳造などの基本的な製造法・加工が含まれている機械製品である万力を例にして、初心者がよく行う間違いや読みにくい・勘違いを起こしやすい事例を紹介していくことで、見やすい図面の描き方をマスターして行きます。したがって、構成部品毎に用いられているテクニックをTips形式で観ていくため、規格を系統立てた章立てにはなっていないことを予めご了承下さい。
用いられたテクニックがJIS B 0001 機械製図などの規格のどこに対応するかについては、読者の皆さんが改めて関連付け・復習して頂ければ幸いです。
免 責
※この資料は、機械製図の作図テクニックのHow toをターゲットにするため、説明の都合上で設計に関しては実際の製品からあえて簡素化や変更・コスト度外視している部分がある事を予め了承して読み進めて頂ければ幸いです。
※あくまでTipsとしての作図例であるので、実際には設計用途などにより重視する点は変化します(例 精密加工用万力、コスト重視の廉価製品)。したがって、ここで完成させた図面が最適であるとは限りません。
※今後、ISO規格への整合化などによりJIS規格の改訂があった場合には、記載方法が変更になる場合もありますので最新の情報を常に確認して下さい。
著作権
※このブログに記載した記事内容の著作権は,引用図面等を除いてTypeRが保持します.